素朴な疑問
その朝（１８）
「なー、リーダーの上半身はなに着てるかこないだ判ったんだけどサ」
カウチに横座りになって銃の手入れをしながら、ミスタが何気なく言い出した。
「下はどんなん穿いてんだろな？ ぶっちゃけ、パンティー」
……下品なやつ。
フーゴは聞かなかったことにして書類から眼を上げもしなかった。
「えーッ！？ ミスタそんなこと言っていいのーッ！？」
新聞を読み終わって丁度たたみ終わったところの（ミスタはタイミングを計っていたら
しい）アバッキオを見やって、ナランチャが素っ頓狂な声を上げた。
聞かなかったことにすることにしたのはフーゴだけではなかったようで、具体的に話を
振られたアバッキオは全くなにもなかったかのように足を組み直してアームチェアにふん
ぞり返って眼を閉じた。
……そうそう。スルーしてください。
ペンを走らせながら、フーゴはそれを容認した。
「あれ？ 聞こえなかったのかな？ 先生、アバッキオ先生？ 迷える子羊に教えてやっ
てくださいよー？」
わざとらしくミスタが声を掛ける。
無視。ガン無視。
……そうそう。そうやってしばらくしたらお昼の仕込みにでも入って、あと３０分もす
ればブチャラティが帰ってきますから、無視したまま乗り切ってください。大丈夫、でき
ます。
フーゴはパープルヘイズを使って伝言を頼みたいところだが、スタンドを使った会話は
別のスタンド使いにも筒抜けになるから諦めた。まあ、この男は物堅いところがあるから、
男と女のマナーについても心配は要らないだろう……。
「なーアバッキオーあんたなら知ってるんだろ？ 隠すなよ。ブチャラティって下着に凝
る派なんだよな？ やっぱパンティーもスケスケとかなわけ？ なー？ 教えろよ？」
無視されている間にミスタはムキになってしまったようで、どんどんきわどいことを言
いかけてくる。アームチェアの背後に立って、長い腕を絡めて顔を寄せてくる。
……昔はシンプルなやつだったんですけどね。胸の方なんかつい最近までなんにも付け
てなくて。胸元を破られたらすぐに見えたものだからこっちがびっくりしたよなあ。それ
からはしばらくこっちも気になって気になって仕方がなくなって……じゃない！
最初の頃はポルポさんをはじめ上のひとや街のひとたちに胸がない胸がないって相当言
われてたもんなあ。あのひとおかあさんとは早くに別れちゃったし、そういうの、注意し
てくれる人いなかったんですよね。亡くなったトンマーゾさんの恋人さんが気を遣ってく
れるようになって……最近は金回りが良くなってきたからかな？ アクセサリーとかには
興味ないみたいなんですけどね。あのひともやっぱり女性なんだなあ……。それで、恋人
ができたら、そりゃいっそう気合いが入るだろう……。
気がつくとフーゴもその話題に気を取られてしまっている。
秘密を知る人間は、絡みつく腕を難なくほどいて立ち上がり、やや早いが昼食の仕込み
に入るようだった。
「ミスタ、やめろよなー。そんなん知ってどうするんだよ」
興味津々ながらもナランチャはブチャラティへの礼儀の方をまだ優先しているようだ。
……ナランチャ、意外ですがきみを見直しました。
フーゴはもう書類を見る気を捨てた。
……下着？ 下着ってそりゃ、上がああなら下もそれなりだろうよ。
押し黙ったまま、アバッキオはさっきから考えていた段取り通り、野菜を揃えて下ごし
らえに入った。長い髪は真面目に後ろでまとめて、バンダナで覆っている。
……下着なんざ知るか。おれが気にしてんのはその中身、体よりまだ奥の奥なんだから。
自分がブチャラティに対して求めているのはもっと精神的なものだと言いたいのだが、
うまく言える自信がないし、なにより混ぜっ返されてなおきわどいことを言いかけられ
そうな気がしてならないのだ。
いや、実際のところ、彼はひとに語れるほど真剣に恋人の下着なんぞつくづくとは見て
いない。
……昨夜、ゆうべはいつもの通りいっぺんうちに帰ってシャワーを使ってから……。と、
彼は記憶の中にわけいっていく。手は、休まずにタマネギのスライスをおぼつかない手つ
きで続けているけれども。
シャワーを浴びて、一張羅のコートジャケットにブラシを当てて、また身支度を整える。
あんまりうかれたように見えないよう、顔を引き締めて街を歩く。時々は、差し入れに焼
き菓子を買ったり、ブーケを持たされたりする。昨夜はなんだっけ、イチゴが余ったと言っ
て押しつけられたんだった。
一応鍵は持たされているけれど、けじめとしてノックをする。すぐに中から応える声が
して、優しい笑顔が迎えてくれる。明るくて、いい匂いがして、居心地のいい部屋に入れ
てもらう。
「アガタさんからもらった」と、ちゃんとプレゼント主の名前も忘れずにお土産を提出。
よくできました、と頭を撫でられて、
「また洗ったままで来たろ？ もつれてるぞ」と顔をちょっとしかめられる。
「ちょっとそれでも摘んでろ」と、洗ったイチゴを入れたボウルごとカウチに転がされて、
恋人は嬉々としてブラシをかけてくれる。犬か猫にでもなったような気になって、この優
しい女に全てをゆだねているのが心地よい。
「伸びたもんだなあ」
短髪にしていた頃を知っているから、しみじみと嘆息する。
「そうか」
「手入れはしてるのか？」
「あァ？ いや、適当に洗うだけだ」と、これは男の見栄。ブチャラティが気に入って指
を絡めてくるのが楽しくて、見苦しくならないように気を遣っている。
「イチゴ、ちゃんと半分残せよ？」
所在なく手を伸ばしていたのに目を止めて、ブチャラティは笑った。チョコバーを一人
で食べてしまったと言ってケンカしたのは秋のこと。
「あァ。美容にいいんだと」と、アバッキオはもう手を止めた。その手を戻して、カウチ
に横座りに彼の髪を梳かしているブチャラティの腿の辺りに軽く触れさせた。
「……あれは冗談で言ったつもりじゃないんだが」
消え入りそうな声で言うから、なにかタイミングが悪ければ聞き逃していただろう。二
人、同じことを思いだしていたから、なんのことを言っているのか理解できる。
……わたしがアバッキオをお婿にもらうんだ。
堂々と宣言したのに、あれからいろいろ忙しくて、なんの進展もなく年を越してしまっ
た。もう、春も近い。
「ジョルジョーネの店に、指輪を見に行くか」
何気なさそうに、脈絡なさげに、アバッキオは言ってみた。顔は伏せて見せていないが、
代わりに、プラチナ・ブロンドが一瞬華やかに輝いた。
「ああ」
眼を細めてそれを楽しんで、機嫌良くブチャラティは作業を続けた。そのうちにその手
をアバッキオが捉えて引いた……。
「奥の部屋へ……」
それは、寝室だ。
若い男と女がひとつ部屋にいたら くっついちゃうのが幸せだ
愛の想いが盛り上がり 二人っきりで退屈なんかするはずもなく
手足で腕で唇で ひとにはいえないことをする
……なんて歌だったっけ。昔の歌。何百年も前から、恋人同士のすることなど変わっちゃ
いない。
初めての夜から、結局のところ主導権はブチャラティが握っていて、真面目なだけが取
り柄だったアバッキオは、翻弄されるばかりだ。あまり事細かに行為の全てを記憶して吟
味すると、懺悔室に駆け込んで洗いざらいしゃべって悔い改めたくなるので、感覚器の受
容した情報だけを端的に残しておくことにしている。というより、その辺りの記憶はいつ
も薔薇色に霞がかかっていて、冷静な分析の入る余地がない。
フロラが笑った。
しなやかな腕が動いて首に絡みつく。
女の唇が甘いなんてウソだと誰かが笑った。
そりゃ文学的表現て奴で。
じっさい甘くはないけど。
気持ちいい。
フロラが色っぽい。
細い指が器用に動いて、おれの服を取り去ってゆく。
気持ちいい。
フロラがなにか囁いた。
きもちいい……
髪が垂れて頬にかかった
なんてきれいに笑うんだ……
フロラのくちびるが……
きもち……いい……
「あー！ なんかエロいこと考えてるだろ？」
ミスタの声がして、アバッキオは甘い回想から引きずり出された。油断していた。もう
パスタ鍋には湯が大量に沸いている。アバッキオはパスタをケースから取り出してさばい
て鍋に入れた。
「黙秘してもだめよぉーん。おめーが黙りこくってるときはひとりムーディ・ブルースやっ
てるってもうばれてるんだから。このスケベ。昨夜のことみんな思い出せたかぁー？」
半眼になってパスタを見据えるアバッキオの顔を下から見上げながら、ミスタはその頬
をつんつん指で突く。
「くだらん」
いつも通りの不機嫌な顔で心を鎧って、アバッキオは作業を続ける。フライパンにオリー
ヴ油を入れて火にかける。時間通りに食事を出さないと、なによりこのミスタとそのスタン
ド達が機嫌を損ねるのだ。
「なんでそんな、……ひとの女の下着の色まで気にする？」
少しの羞恥で、「ひとの女」と言うときに声が小さくなった。
「えーだってー。いくら好みに真ん真ん中当たってなくても、あれだけいい女だと気にな
るってー。
そのいい女がもうめろめろに惚れこんでる奇跡的な男なんだぜ、『アニキ』よぉ、男の
中の男じゃねーか、おめーは」
ミスタはおだてて口を割らせる作戦に出たようだ。
ミスタの興味はとりとめない。話題は時と場所を選ばずに出て、周囲の迷惑を気にしな
い。そして、得られた情報をなんに使うと言うこともなく、ただその場の欲求が満たされ
ればいい。
……流してしまえば後には残らないんですから。がんばって。
フーゴは息を詰めて見守ってしまっている。
「そこに立つな。はねるぞ」
短くアバッキオは警告した。
「あぢーーーーーーーッ！」
熱したフライパンに、水をあまりよく切らないでタマネギを放り込んだ。盛大に油がは
ね上がって、ミスタは飛び退った。
「上出来、上出来」
そのまま料理にかかりっきりでミスタの追求をかわしきった。食卓に着いたフーゴが呟
いたのに、ナランチャが肯いた。
「うん、今日もうまそう」
「始めてましょう。ぼくらは午後に用事があるんだし」
「そうだな」
予定ならもう５分もしないで帰ってくる頃だ。テーブルの上には、待ちかねたミスタの
スタンド達がもう姿を現していた。
「ブチャラティ今日はなんだったっけ？ こら、ｂP、そりゃおれの肉だッ！」
「町内の皆さんの寄り合いにオブザーヴァー参加です」
「……長いな」と、アバッキオは時計を見上げた。これだけ時間が経つと、ブチャラティ
の分のパスタはあとで改めて茹でてやった方がいいと判断したようだった。もう冷めかけ
た、取り分けてあった分を自分に引き寄せて掻き込む。
「町内の寄り合いなんかでなに長話することあるんだよ？」
ナランチャが満腹して伸びをした。
「ここ最近じゃ、麻薬、ですかね」
「うちは麻薬は最低限しか扱わないいいギャングなんじゃなかったのかい？」
そう聞いてたぜ、といいながらミスタはスタンド同士のケンカを引き分ける。弱いもの
いじめなんざ、男のするこっちゃねーぜと諭している。
「アアそーだゼ。ｂT、オメーは弱い奴カァ？」
「チ、違うよォ！」
「ジャアおれのやってんのは弱いものいじめジャアネーナ！ ナー、ミスタッ？」
「ったくよー、誰に似たんだかね」と、ミスタは弱り切る。
……きみです。
フーゴはつめたい目のまま心中言い捨てた。
「ブチャラティもその辺最近はいぶかしがってるみたいですけど。なにぶんボスの意向なん
で」
「さすがの守護女神も、ボスには逆らえんか」
アバッキオが憮然として言った。街のみんなの小さなトラブルを処理するのは、立場こ
そ違え彼の目標とした仕事と通じる面もあり、前ほどの抵抗も感じなくなってきているが、
あからさまに他人を不幸に陥れる麻薬の密売行為にはさすがに嫌悪感を隠すことができな
い。なにも考えないで部品になりきろうとしているのはそのためもあった。
「もっと、ボスも一目置くような大幹部になれば、あるいは」
フーゴが青い眼を煌めかせた。
「おっかねーこと考えてるな？」
ナランチャが笑った。
「冷えてきましたね。アバッキオ、ココア入れてくれませんか？」
「あァ」
いつもなら、食事以外でまでひとを使うなと噛みつくところを、今日は口実をつけてキッ
チンに追いやろうという配慮だと正しく理解して、アバッキオはさっさと席を立った。
「さっきの話だけどよ、アバッキオ」
その背に、まだミスタがまとわりつく。
「ブチャラティって、あれで結構固くって、いろいろ声かけられててもガン無視だったら
しいな」
アバッキオは手を止めずにココアパウダーを練っている。
「それが、おめーを拾ったなりもう全開で。こおりゃー男冥利に尽きるってもんだ」
「ああ、まぁな」
アバッキオがとうとう応じた。
実のところ、ミスタはブチャラティが実際なにを穿いているかについてはそんなに興味
はない。ただコミュニケーションを取って楽しく盛り上がれればいいだけで。今となって
はもう、アバッキオの口という名の蛎殻をどうやってこじ開けるかということに興味は移っ
てしまっている。
「おれたちには見せないオンナの部分を、おめーにだけは見せてるんだなーって、うらや
ましく思ってるおれたちの気持ち、解ってくんねーかなぁ？」と、やや自分より高い位置
の肩に、無理して手をかけて囁きかける。
「……そうか？」
……今日に限ってなんでこんなに遅いんですかッ！ あと３０分のところがもう１時間
になるじゃないですかッ！ このままだと押し切られてずるずる洗いざらいしゃべらされ
ちゃいますよッ！
フーゴはもういたたまれず、窓の側に場所を移して外ばかり見ている。
「そんで、どーよ？ 思いだした？」
「いや、そんな……」
顔はどんどんうつむいて行って、逡巡する顔を長い髪が垂れかかって隠す……。
窓から外を気にしていたフーゴがとうとう待ち人の姿を目に止めた隙に、一気に堤防は
決壊した。
「……なんていうか、あんまり、解りやすい色じゃない。ミルクティみたいな、白っぽい
茶色」
「えー？ なんでそんな変な色」と、ナランチャが単純な感想を口に出す。
「ああ、白い色の服だと、下に着てるものの色が出るから、そういうきれいじゃない色を
付けることはあるな、女は」と、訳知りにミスタが肯く。
「だってそんなばーさんみたいな。がっかりだぜ」と、あくまでナランチャは子供っぽい
感想を垂れ流す。それに対して、恋人の名誉を守りたいような気がこみ上げて、
「……オフの時は、その分びっくりするような色で」と、アバッキオはなおも口を滑らせ
てしまう。
「おめーが驚くってことは、そうか、原色なんだな！？」
ミスタの察しの良さに、慌ててアバッキオは後悔するのだけれど。
「原色って？」
ナランチャが何気なく尋ねた。
「そりゃー、赤とか黄色とか青とか」
ここから先は決して口を割るまいと、アバッキオは口をへの字に歯を食いしばる。首に、
太い筋が浮かんだ。
「なー、オフって、いつ？」
ニヤニヤ笑いのミスタがさりげなく引っかける。
「…………クリスマス」
耐えきれずに目を逸らして、一言だけ答えた。
「ってことは」
「サンタ色だ！」
ミスタとナランチャが目を見合わせた。
「うわー真っ赤なパンティー！ そりゃすげえ！ ブチャラティ気合い入ってんな！」
ナランチャが真偽を問うより先に、アバッキオの顔色がそれを正解と認めていた。
「え、ちょっと、やばいですよ！」
話の成り行きを一瞬取りかねていたフーゴが事態を察して制止の声を上げたその時に、
ドアは開いた。
「紳士諸君、楽しそうだな」
場は一瞬にして凍り付いた。
「おしゃべり」
と、ただ一言冷たく言い捨てただけで、ブチャラティは歩き去った。
後には、最後の１分を我慢しきれなかったことを悔やむ勇者が絶望と徒労感に膝を折っ
た。
……あァ、オレって人間はな…くだらない男さ、何だって途中で終わっちまう。いつだっ
て途中でだめになっちまう……。
「まったくなんだって今日は長っ尻なんですか！ ああッ！ 昼間っからお酒の匂いまで
させてッ！ 見損ないましたよブチャラティ！」
１時間も孤軍奮闘したのに！ フーゴは義侠心からブチャラティに追いすがって食って
かかった。
「ロドリゴさんの店が新しい焼き菓子を出すからって見本がお茶菓子に出たんだ。ブラン
デーが効いてるだけだって！ 絡むなよ、フーゴ」と、ブチャラティはうるさそうに顔を
しかめる。
「いいえッ！ 今日のは男として許せませんッ！」
「なんの話だ……？」
……ブチャラティが町内会で捕まって帰ってこれないのなんていつものことなのに、なん
だって今日は絡むんだろう？
その様子を見ながら、ナランチャはちょっとした疑問を抱いていた。
＜２１−０４−０９＞
＜おまけ＞
「ちょ、ちょッ、待てーッ！！」
寝室に抑えた悲鳴が上がった。
「だめか？ サンドラによると、どんなカッコつけた男もわめき懇願するぐらいにクる直
結ポイントだそうだ。スタンドを使えば、痛みもなく直触りでいけるのに」
サンドラというのはブチャラティの友人の娼婦だ。エキゾチックな黒髪美人で、美貌に
加え、さばけた性格と卓越した技術で他の追随を許さないこの街の最高のプロだという。
「そこまではいいッ！ そんな用途にスティッキィ・フィンガーズを使うなッ！」
「遠慮しなくても。おまえには最高の快楽を与えてやりたい。それがわたしの……」
「ノ・グラッツェェーッ！！」
アバッキオは無意識にそこを庇って、ベッドの上で後じさりした。
「じゃあ、せめてこれくらいは」と、哀しげな目をして、ブチャラティは顔を伏せる……。
たいして間をおかず、喘ぎ声が漏れ始めた。
……ああッおとうさん！ あんたの息子は女に○○○を××××るようなド変態に成
り下がってしまいましたッ……。
その夜、窓から遠く故郷を望んで涙に咽ぶアバッキオの姿があった。
＜別解＞
懺悔室に駆け込んで洗いざらい告白して許しを請うアバッキオの図。
「またかねレオーネ……主は全ての男に、等しくつがいとなる女をお与えになった。おま
えとブチャラティもそうだ。なら、二人が交わりをすることはなんら主のご意志に背くも
のではないのだよ」
「でもッ！ 司祭様ッ、フロラったらあんなことやこんなことをッ、許されませんよねッ！？
正しきキリスト者としては断固として断るべきでしょうッ！？
……ああッでもおれは快楽に負ける弱い男なんですぅぅぅッ！！」
「おまえは確かに一度は道を外れた。
しかし、悔い改めてまた正しい道に戻ろうとしている。それこそ、主のお喜びになるこ
となのだよ……」
…………本当にひとは見かけによらない……たまにはもっとこう大胆な行為の懺悔を聞
きたいもんだがなあ。
皺の中に表情を隠して、人格者そのものといった初老の聖職者は、懺悔室の常連の相手
を忍耐強くしてやりながらこう思っていた。
蛇足。
けっこー難産だった。
うちのミスタさんはなんも考えてないよ。悪気フリーで。
でも時々神発言するよ（その５「神様の思し召し」参照）。ホントに時々。
男と女のマナー違反。でも、酒の上では結構男の方がぺらぺらしゃべって顰蹙を買った
りしているけど、実際とんでもないネタまで洗いざらいしゃべってるのは女同士なんだよ
ね。きっとブチャもサンドラさんにはアバッキオの弱点とか全部垂れ流してると思う。
サンドラさんは前から話には出てるけど本編は未登場。その１７「知恵袋」で約束した
フーゴの初体験候補はこの人なんだけど、さて、アバッキオは約束守ったのかなあ？ ル
チアがいるので彼にはルチアに初めてを捧げて欲しいものだと思うけど、その辺、プロの
女性が身近にいるひとは感覚違うのかなあ？ どう思います？ その辺。
イタリアに公娼制があるかは知らないが、作中自分で立ってるおねえさんはいたし（ア
バッキオの過去のあたり）、向こうに留学してた合唱の先生がローマの郊外にはそういう
地点があっておねえさんが「ｔｒｅ♪（３枚でどうよ？）」って誘ってくると言ってたん
で、いると思って書いてる。