宣誓
その朝（５１）
１
シニョーラ・ブチャラティが母親に面会する年に一度のチャンスをぶっつぶしてくれた
ペナルティを、このところリーダーに過保護になってきているフーゴは過酷に課した。年
明けから２週間、ぶっ続けで旧グリマルディーニ・チームにネアポリス全市のシマのパト
ロールと、危険レヴェル４以下の案件の処理の一任。その間、いろいろトラブルを抱えた
旧ブチャラティ・チームは開店休業状態となった。これで、新年早々腕にひびを入れてつ
いでにブチャラティとの間にもひびの入りかけたアバッキオに、２人でローマへの小旅行
をプレゼントしたのだったが。
だいたい、アバッキオはふだん賄いと調査に徹していて大きな身体を持てあましている。
おまけにスタンドが戦闘向きでないので細っこい少年の先輩達に突撃をやらせていること
に気兼ねしていて、たまに戦闘に出くわすと頑張りすぎる。損傷率が高いのだ。またそれ
にブチャラティがいちいち大騒ぎするから病院への付け届けも大がかりになる。経費がか
かってしょうがない。
……今度からあまり現場に出さないようにしなくては。
フーゴは「有機的な人材配置」について考えこむ。
本人は自傷行為にしか使ってこなかったから自己評価が低いが、そのスタンドだって余
人をもって換えがたい貴重品だ。大切にしたい人材なのである。
とりあえず、ローマは彼らにとって縁起のいい場所だったので、ブチャラティは鼻の先
を赤くしながらもご機嫌で帰ってきた。心配したアバッキオの体調も、身を慎んだせいか
なんとか保ったようで、２人をゆっくりさせてやることができたと参謀はほっと一息つい
たのだが。
２
「……ネ、……オーネ」
その夜、アバッキオは自分を呼ぶ声で目覚めた。弱々しい、珍しい恋人の声。
「済まないが、水を取ってもらえるか？」
「ああ。どうした？」
すぐさまベッドから手を伸ばして、アバッキオはミネラル・ウォーターのボトルを取っ
てやった。いつものちいさな気遣いで、キャップまで外してから手渡す。と、受け取る手
が震えてボトルを取り損ない、胸元に水が零れ掛る。
「あァ、済まねえ、最後気を抜いちまって……今タオル取ってやる」
夢うつつだったアバッキオは本格的に意識を目覚めさせて、ベッドからがばと身を起こ
した。
「さむッ……そう風を立てないでくれ」
「あァ？ ……ああ、済まねえ」
タオルと、パジャマの上衣の替えを探してアバッキオは灯りを付けた。
「……ッ……まぶしい」
「解ったよ」
すぐにアバッキオは応じて灯りを落として近寄った。このひとはこんなに細かく文句を
付けるひとだったっけと、ふと疑念が萌している。
とん。
ペットボトルが、床に落ちた。水は残っていなかったようで、被害はなかったように見
えた。
「どうした？ かなり疲れてるな、あんた」
３日も留守にした部屋は冷え切っていて、シャワーを浴びるなりブチャラティはベッド
に潜り込んだようで、自分のフラットに荷物を置いてきたアバッキオがチャイムを鳴らし
た頃にはもう熟睡しきっていた。アバッキオは合い鍵を使って入り、冷え切ったベッド・
ルームで洗い髪のままのブチャラティの髪にドライヤーを当ててやるべきかしばらく悩ん
だ後、タオルドライだけ念入りにしてやってその横に潜り込んだ。２人、身を寄せ合って
いれば温かくなる。このブルネットの佳人の側以外に、自分の心身を休める場所はないと
もうはや思い定めていたので。
……その２時間後を時計は示していた。
とりあえず、スチームの電源だけは入れて、アバッキオは床に落ちたボトルを拾って片
付けると、新しいボトルを持ってベッドへ戻った。ブチャラティは手足を縮こめて震えて
いた。
「……さむい……」
「だから脱げよ、濡れた服を」
荒っぽく毛布を剥いで、濡れたままのパジャマの上衣を脱がせようとすると、
「やッ、寒いッ」と、ブチャラティはむしゃぶりついてきた。
「くっつくなッ。ほら、それ脱いで、おれまで濡れるだろ」
手を突っ張って寄せないようにしながら服を脱がせてやって、胸元にタオルをあてがっ
た。まだ身を抱くようにしているブチャラティは、らしくなくがくがく震えている。
「どうしたんだよ？ ホントに」
ボタンのひとつひとつを留めてやりながら、アバッキオは忍耐強く言葉を掛ける。撫で
やった洗い髪は氷のようだった。
「ああ、もう、ホントに」
いつも甘やかして貰っているからご恩返しというか、敵討ちというか、いつもなんでも
自分でやってしまうこの佳人の世話をなんだかご機嫌でアバッキオは焼いてしまう。
「首筋冷やしたのがよくねえんだよ」なんて言いながら、両脚の中にしっかり細い腰を抱
え込んでドライヤーを掛けてやる。真っ白な背中に熱風を吹き付けてやって、火傷するく
らいに温める。
「おれが来るってのに真っ暗にして寝ちまいやがって。スチームも入れねえで。鍵まで掛
けて。ちょっと前ならいじけて帰ってたぞ」
ぶちぶちと恨み言を言いながら、ブローブラシを器用に扱って、真っ直ぐな黒髪を整え
てやる。姉たちにはさんざんこき使われた挙げ句にぶきっちょなんだからと仕上がりに文
句を言われ、理不尽さに歯がみしたものだが、ほとんど意識のない恋人は、文句も言わず
にされるままになっている。
大好きなひとの髪を整えるのはなんと嬉しい、楽しいことか。
氷づけの海藻のようだった髪が、さらりといつものように艶やかに顔の周りを縁取った。
その髪を掻き撫でてやって、アバッキオはしみじみ幸せを噛みしめる。迎え入れて貰え
なくても、ここは自分が入っていい場所。自分がしてやりたいと思うことをしてやって拒
まれない相手。もう自分が手にすることができないと一時は思い詰めたちいさな幸せ。
「フロラ、まだ、寒いか？」
返事がないのは判っていた。そっと身を横たえてやって、アバッキオはドライヤーを片
付けに行った。
静かに毛布をめくって、丸まって眠っている女の背から抱く。丁度ひとまわり小さい体
は、そうやって腕の中にぴったりと収まる。
……丁度こうなるように、神様が誂えてくださったかのような。
一度はまるきり失った信仰心が、近頃蘇ってきているのをアバッキオは感じている。
……こんなことを望みうる身ではないと言うことは知っています、ですが！
どうぞこのひとをおれにお与え下さい。おれがこのひとの側で安らぐことができうるそ
の何分の一でも、このひとがおれの側で少しは安らいでくれますように。このひとがおれ
に与えてくれた幸せの、何分の一でも、このひとに返すことができますように。
どうかどうか、この日々が少しでも長く続きますように！
祈りの言葉の中に、彼は再び眠りについた。
２人で行ったローマは冬の空気をまといつつも賑やかに華やいでいた。いつもあまりい
い思いをしないから、ローマは苦手だとブチャラティは言っていた。年末恒例会議もそう
だが、母親との面会でいつもストレスを感じるのもこの地らしい。
……あ、でも、一昨年はよかった。おまえが一緒に来てくれてたし。
慌てて言い添えて、そして少しはにかむように笑った。
去年は突発事態で、ついていけなかった。やはりまた例のお嬢さんに絡まれたらしいが、
小さくなっていた自分にブチャラティはお土産をいろいろ買ってきてくれて、チームの皆
で盛り上がった……。
ローマに２人で行ってこいというのは、その思い出を上書きしてこいということだろう
か。フーゴの考えは時々彼らにはついていけない。年明け早々の事件では思いの外深刻な
ことになってしまって、チームには迷惑を掛けた。ここで２人きりの時間を取って、関係
を完全に修復して固くしておけということだろうと２人は認識した。
まるきりお上りさんの観光客になって、２人は自分たちに科せられた課題はちゃんとこ
なしてきた。ふつうの年相応の格好をしたブチャラティはまた格別で、アバッキオは鼻が
高かった……。
３
深夜の電話で彼女は起こされた。少し通話が遠い。市外通話のようだ。
「……母さん……おれだ」
間違えようもない声に胸を轟かせて、彼女は受話器を持ち直した。
「どなた？」
声は他人行儀なままに。
「母さんッ！ あんたの息子のレオーネですッ！ 済みません顔を出せるような身分じゃ
ないことは解ってます。父さんにもおじさんたちにも恥をかかせてしまってすいませんッ」
泡を食って早口になるのは変わらない。どうやら本人のようだと彼女は判断した。
「番号をお間違えのようね。時計をご覧なさい。イタリア標準時なら電話を掛けていい時間
じゃありませんよ」
口は冷静に非礼をとがめている。
「母さんッ！ 緊急の要件ですッ！ お許しを乞うのは後にしても、どうか教えて下さいッ！
おれの彼女が！ おれのことを拾ってチームに迎えてくれて仕事と居場所をくれた恩人
の恋人が、ひどい熱なんだ！ もう何時間も熱が下がらない！ どうしたらいいんだ！？」
「……ジャポネでは家に寄りつかない息子や孫を騙った電話の詐欺が流行っているそうだ
けど。お金ならあげられませんよ」
彼女はとぼけた声で間を取った。
「違いますッ！ お金をせびろうってんじゃないッ！」
電話の向こうでは身もだえをしているようだ。
「お若いひと、うちにも同じ年頃の息子がいますから、なんだか身につまされるようだか
ら助言してあげましょう。
救急に行ったらいかが？ それにしても、いつからどのくらいの熱が出ているかぐらい
は聞かれるでしょう。容態を整理して。持病があったりはしないのかしら」
「医者にはかかれない……立場があるんだ。持病はない。つい今日まで元気に旅行してき
て帰ってきた途端なんだ。
３０分ごとに熱を計ってたけど、３８度、５分、３分、５分、３分ってところ。頭には
濡れタオルを置いてる。部屋は暖かくして……２３度だ」
「疲れたのかしら。旅行はどちらへ？ 温かいところから帰ってきたの？」
「ローマだ。こちらの方が温かい……留守にしていたから部屋は冷え切ってたけど」
「冷えたのね。それで疲れが出て熱が出たんだわ」
「洗い髪でベッドに入ってて。寒い寒いって言ってた」
「まあ、それはうっかりね。そんなときならいっそうちゃんと髪は乾かさないと」
「今は暑い暑いって……」
「熱が上がりきったなら下げないと。もう暖房は切ってもいいくらいだわ。４０度までも
行かないなら死にはしません。毛布も１枚ぐらいにして。どうせ埋まるほども掛けてあるん
でしょう？ もういいわ」
「母さん、だって！」
電話の相手は図星を指されながらも抗弁する。
「局面をちゃんと見極めなさい。人間の体は巧くできているの。寒いと思ったら熱を興し
て自分で暖まります！ それが行きすぎたから熱になってるだけ。熱が籠もって暑いんだ
から今は涼しくしてあげるのが筋です」
「わ、解った」
「水分を採らせてあげなさい。林檎が剥けなくても今はスポーツドリンクでいいのがある
でしょう。少しお水で割るぐらいでいいそうよ」
「はい」
「あなたが落ち着いて。あまり騒がしくしないの。彼女さんの体力を信じて。ゆっくり休
ませておあげなさい」
「解った……ありがとう、母さん」
「間違い電話です。次からは間違えないでお掛けなさいね」
「はい……失礼しました」
しゅんとした声を察して、彼女は言い添える。
「家に顔を出せないと仰ったわね」
顔から話そうとした携帯電話を握り直す気配が届く。
「どんなコトをしでかしたのやらわたしには解らないけれど。
……ひとりのおろかな母としてなら、どんな卑怯な、恥ずかしいことをして顔を上げて
生きていけないようなことになったとしても、たった一人の自分の息子がどこかで生きて
いてくれるのなら、それだけでいいという考えもあります」
「母さん！」
「生きて、そして恥を雪ぎなさい。そのためにあなたの命は生かされてあるのです。後悔
して、ただ自分を責めてはいつくばるだけではあなたの大切なひとにも恥となるでしょう。
ただ一心に、そのひとにお仕えなさい。道はそこから開けることでしょう」
「わかったよ。母さん。ありがとう……」
「間違いだというのに。ほんとうに、迷惑だこと」
通話を切って、彼女は独りごちた。
「本当に、どうしようもない子だけど、女運だけはあるようね」
「クリスタ、誰からだ？」
寝室から、彼女の夫が声を掛けた。
「いいえ、間違い電話でした。いまどきの若い人は本当に、もう」
口は迷惑そうながら、弾んだ声で彼女は答えた。
朝はその日も変わらずに訪れ、ブチャラティは静かに目覚めた。すこしの間隔を空けて、
傍らには彼女の大切なひとが寝息を立てていた。半回転してその間隔を詰め、更に半回転
してその上にのり上がって、彼女はおはようの挨拶をした。
「レオーネ、いつ来たんだ？ なぜ起こさなかった？」
「ああ、もう体はいいのか？ 起こすどころか、あんたひどい熱だったんだぞ」
ぐえ、とうめき声ひとつで眼を覚ました恋人は、すぐさま額に手を当ててきた。
「ああ？ ……寒かった。とても寒くてそれどころじゃなかった。なんでおまえを帰した
りしたんだろうと心から後悔した。待ってられなくて寝てしまったが……寂しかった」と、
両腕を太い首に絡めた。
「頭ぐらい乾かせよ。スチームも入れてなくて。ローマまでいって土産が風邪なんて、フー
ゴに叱られるぜ」と、アバッキオは安堵の笑みを見せた。
「大丈夫、もうなんともない」
無邪気に笑う佳人は頬を寄せる。
「だいたいあの格好は寒くないかって、ずっと思ってたっておれ」
「いいじゃないか。喜んでたくせに」
「だって、ほんとにあれはいかしてたぜ。みんな振り返って見てた……」
「じゃあいいじゃないか」
甘い会話はいつまでも続いた……。
４
甘やかしすぎたかも知れない。
フーゴはちょっと不機嫌すれすれの感情を抱えてアジトへと足を進めている。昨日ロー
マから帰ってきた２人は、うっかり風邪を拾ってきたようで、もう一日休ませてやってく
れとアバッキオから朝電話が入った。ブチャラティじしんは、もう大丈夫だ、これ以上迷
惑を掛けるわけにはと電話の横で言っていたようだが、アバッキオが、昨夜は気が気じゃ
なかった、大事を取るんだと口うるさく言っていて、休みをやった効果はあったようだけ
ど、とても聞いていられない甘い雰囲気に負けて言い分を認めてやってしまった。
それにしても、今年はそんなにローマは冷えたんだろうか、いつも神経をやられて疲れ
切って帰っては来るけれど、熱なんか出したことはないのに、とフーゴは危ぶむ。と、前
方でなじみの一家が開店の支度をしながらなにやら朝から言い争いをしている。
「だから、ありえねーって！ ねーちゃんの見間違いだっての」
「なにいってんの、このあたしはフロラと同級なのよ？ そりゃ、あの子なにかと忙しかっ
たからつるんで遊んだりはしたことなかったけど、間違えやしないって！」
「アニタが見間違えることはないだろうけど、なにがそんなにありえないってのさ？ ニッ
コロ」
「オフクロ、だってよ、よりにもよってブチャラティがだぜ？」
「ブチャラティだって、オフの時には気合い入れた格好ぐらいするわよ！ あれでもあた
しと同い年なのよ！ それも、極上のハンサムの彼と旅行よ！ ここでおしゃれしないで
どうすんの！？」
「旅行って、あの子たちが行ったのはローマだろ？ そりゃおしゃれはするだろうけど」
「おはようございます。うちのリーダーがどうかしましたか？」
フーゴは明るく声を掛けた。ニッコロの一家は往来でしょうもないことで言い争いをし
ていたことに今更のように気づいて作り笑いを浮かべた。
「ああ、おはよう、フーゴ」
「フーゴ、聞いてくれよ」
「ねえフーゴ、あんたは見てない？」
口々に、この街を仕切るチームの参謀役に話の裁定を持ち込んでくる。
「なんです？」
「あたし見たのよ！ この前、チェネレントラってブティックでブチャラティがすっごい
ミニスカート買ったところ！」
「嘘だよな？ ブチャラティがそんなちゃらちゃらしたもん穿いたりなんかしないよな？」
と、ニッコロはムキになって食い下がる。
「しばらく見ないと思ったらレオーネと旅行だったんだって？ でも、この季節のローマ
にそんな、ミニスカートなんて」と、彼らの母親が尋ねてくる。
「ひらひらのジョーゼット……春物だったと思うけど」
黙って聞いていた参謀は、ふいにひらめいて指を鳴らした。
「それだ！」
「……なに？」
お節介な一家は面食らって尋ねかえした。
「ブチャラティがこの時期ローマから風邪引いて帰って来た理由をぼくも知りたかったん
ですが」と、フーゴが言葉を濁す。
「あーあ」
ニッコロが眉をハの字にした。
「……あの子はいつもパンツだから、この時期ミニスカート穿くときには気合いだけじゃ
ダメだってこと」
アンナはフーゴに解説してしまう。
「解らなかっただろうねえ」
アニタが溜め息を吐いた。
「ちぇ」
ニッコロが、尊敬する女性リーダーが堕落して幻滅したような気分を顔にまともに表わ
した。
「タイツも薦めてやれば良かったのに、気の利かない店員だよ」
アンナが肩を震わせた。
「うちの娘がそんなこと言い出したら絶対止めるのに。やっぱりあの子たちには大人が付
いてないとまだダメだね」
「はあ、すいませんお願いします」
フーゴはがっくりと肩をおとした。
「どうしてあんたってひとはまいどまいどアバッキオに関しては理性をすっ飛ばすんです
かッ！ まだ１月のローマに薄着で行ったら風邪引いて当たり前でしょうッ！？ それも、
ただのミニじゃなくてよりにもよってジョーゼット！？ 何考えてるんですかッ！？ あん
なもんなにも穿いてないのとほぼ同じでしょッ！？ なんですか、ずっとぬくぬく映画で
も見てたとか言うんじゃないんでしょッ？」
駆け戻ったフーゴはリーダーのフラットに乗り込んで膝詰めで説教した。
「ああ、コロッセオと真実の口とトレヴィの泉にサンタンジェロ城とバッチリお上りさん
してきた。楽しかったぁ」と、ブチャラティはまだベッドの中で、ベッドに掛けているア
バッキオの腰を両手で引きつけながらとろんとした笑顔で言ってのける。
「アバッキオッ！ あんたも鼻の下伸ばしてないで、常識で考えてやばそうだと思ったら
ストップ掛けてやってくださいッ！」
「す、すまねえ……」
アバッキオは素直に小さくなっている。
「ブチャラティ！ あんた真夏になるまでプライヴェイトでもスカート禁止ですッ！」
「そんな殺生な」
「他人にここまで口出しされたくなかったらちゃんと大人として理性をもって行動してく
ださいッ！」
「解った」
ブチャラティはけろりんと、アバッキオはしおしおと宣誓して見せたことである。
（０１−０２−１０）
別解。
「クリスタ、誰からだ？」
寝室から、彼女の夫が声を掛けた。
「レオーネは巧い具合にいいひとと暮らしているようよ。……おんなに優しいのは父親譲
りだから」
「母親似で身も心も美しいからだろう」
きわめて内省的な男の両親は、そう言って笑い合った。
蛇足。
素直でなくてドＳなおかんでした。まいどフーゴ頼りではワンパターンだと思ったので。
こっちも２人して親に挨拶に行ければ良かったのに。重ちーの家や川尻家じゃないけど、
アバッキオの田舎の両親は転落した息子が帰ってくるのをずっと待つんでしょうか。切ね
え。