嬉しい悲鳴
その朝２２
「いいご身分ですねッ！」
ブチャラティの留守を見計らって、フーゴが声を抑えてアバッキオを叱りつけた。
「あんたが来てからこの１ヶ月というもの、ブチャラティの出勤時刻が平均で３０分遅くなりました
よッ！ どうせ朝からいちゃいちゃしてるんでしょう。あんたももう慣れたんなら泊まらないで帰っ
たらどうなんですかッ！ どうせあのひとの作る朝ご飯なんてたいして期待できないんだしッ！」
相当キているらしい。なにげにブチャラティに対してもひどいことを言っている。
「ああ……それなんだが」
アバッキオの方は目を伏せて、やや考えつつ口を切った。
「あのひとは身持ちが堅いっておまえが言ってたの信じるぜ、あのひと男の生理理解（わか）ってね
え」
「なんですそれは？」
「…………これはべつにその気になったんじゃねえって言っても解ってくれねえんだよ、毎朝」
「……毎朝、ですか？」
フーゴの目が探るような色になる。
「おれもいい加減きついんだが……ああいうのは断ったら失礼なんだろうな？」と肩をすくめて見せ
た色男は、やや目をまぶしそうに瞬かせていた。
「……あんま早めに切り上げてもまずいし、いや、おれの見栄なんざどうでもいいんだが」と、小声
で付け足す。
一瞬にして顔を紅潮させた参謀は、がっくりと肩を垂れて言った。
「ぼくの方から注意しときます。ああ、そっちの方は言いませんから。それにしても」
「女にもてるってのは大変なことなんだな」
しみじみとため息混じりに言った色男の肩を、同情とともにフーゴは叩いてやった。
（１１−０５−０９）
蛇足。
しみじみと１８禁。百戦錬磨のようでいてなにげにうぶなブチャということで。単に、内分泌系の
反応でそういうことになってるだけのに勘違いして燃え上がっちゃうってのは、男の方にもあるらし
いんだけども。