サンドリヨン
その朝２３
嬉しい悲鳴 リヴァース・ヴァージョン
ライオンちゃんはどうも低血圧らしい。意地でも認めはしないけれども。
今日も早くから起き出して、ほとんどくっついてしまいそうな目蓋でなんとか１．５人
分の朝食を作ったところで、また寝室に戻ってきた。
「支度はできてるから」と、ブチャラティが丁度眼を覚ましたところのベッドに潜り込む。
「レオナ、おれもう起きるよ」
「５分だけでいいから」
沈没寸前のまなざしは、実のところなんの作為もないのだが。
「しょうがないなあ……」と、嬉々としてブチャラティもその肩を抱き込んで、肩まですっ
ぽり毛布を掛けてやる。と、足が絡んだ。冷える台所に立っていたので、素足の足先が冷
えてしまっている。
「うわ、冷てぇ……」
「んー……」
無意識に抜け目なく、アバッキオの足がより温かいところを探す……。脚の間を、膝を
曲げて奥まで割りすすめてゆく。
「５分はちょっと無理だよ？」
ブチャラティが擦れ声を出して、はでなウオーミング・アップが始まった。
大至急でも２０分は経っていて。
「せっかくのめしが冷めてしまったな」
勢いよくカーテンを開けるブチャラティはご機嫌。
……余熱で暖まりたかっただけなんだけど……。
アバッキオは光から目を庇う余力もない。
「もう出ないとやばいぞ。どうした、疲れちゃったのか？ しょうがないなあ、おれが支
えて行ってやるから」と、朝っぱらから腰に手を回してご出勤。フーゴが怒るまいことか。
反論する気力もないライオンちゃんは、ただアンニュイな雰囲気の中に閉じこもっている。
それがまた妙に不謹慎なオーラをまとっていてブチャラティはついつい目が行ってしまう。
……というわけで、午前中のアバッキオはほとんど使い物にならない。
「またあんたら夜更かししたんでしょうッ！ １２時就寝！ 早寝早起きッ！ 絶対守っ
てください！ ああッもう中学生相手にしてるんじゃないのになんだってぼくがこんなこ
とをッ！」
（１１−０５−０９）
蛇足。
サンドリヨン（シンデレラ）は、火を落したかまどの灰の余熱で眠ったせいで灰まみれ
（灰かぶり）になっちゃったんだって。イヤだそんな余熱。エコかも知れないが。
ひとの寝てた後の余熱はいいよね。しっとりしてて。じっさいの人肌の方がいいってそ
りゃ絶対。
アバ猫もちょっとでも暖かいところを狙ってくる。その辺はシヴィアー。
男アバも女アバも、ご主人様のお求めには逆らわない。
ハッ！ なにげに幹部が絶倫な話になってしまったッ！？