ドブネズミの娘
その朝（６８）
１
１０年ぶりに一家揃ってネアポリスで暮すことになった新市長の家族のうち、各方面調
整の結果、ローカルとはいえＶＩＰの娘であるアンジェラは、相応の私立女子校に編入と
なった。アバッキオは多少抵抗もあったが、高等教育を受けさせて貰えなかったのをほん
の少し引け目に思っているブチャラティがこの際だからと気合いを入れたのと、警備担当
たちが管理や設備が整っているそれなりのお嬢様校のほうがいいと熱心に主張したのだ。
「だが、おれたちはああいうひとたちが言うところのドブネズミなんだろ？
……本当に大丈夫か？ 苛められたりしねえか？ 親の見栄で分不相応なところに入れ
てなじめなかったらアンジェラが可哀相じゃないか」
「分不相応？ アンジェラは外見はどこの貴族のお嬢様にも負けていないが？ 勉強だっ
て、相当すごいエリート校でもなければついて行けないことはないだろう」
「おれの言ってるのはそういう事じゃなく！」
「レオーネ、大丈夫だ。おまえが自分で手塩にかけた娘を信頼しろ」
ブチャラティは例によってパートナーの取り越し苦労をおおざっぱに取り除いてやった……。
アンジェラも、とりあえず母親と一緒にネアポリスで暮すことができればとくに目当て
の学校などはないようだった。
「いいか、市長の娘だなんて言いふらして歩いたりするんじゃないぞ？ おまえの身の安
全のためにな。決して目立つんじゃない……と言っても無理か」
ブチャラティはとぼけた顔をして笑った。
「こんなきれいな小学生、ローマにだっていないぞ。ああ、本当に、レオーネが気を揉む
のが解る。登下校はナランチャに車を出して貰うんだな」
きらきらと輝く栗色の髪を撫でながら、ブチャラティはご機嫌だ。
「はい、お母さん」と、くすぐったそうなアンジェラの姿を見て、アバッキオはしかし思
いを巡らせる。
……せっかく一緒に暮らせるようになっても、おおっぴらに親子と名乗れないんじゃこ
の子の寂しさは癒されないんじゃないか。それを押し殺して、またスタンドが進化したり
して制御できなくなったらどうしよう！？
まったく、お父さんは心配性。
……だからって、市長の娘と知って近寄ってきてちやほやするような子を取り巻きにし
てたんじゃあ、この子のためにもよくないか……。
ギャングの娘のくせにと苛められることを考えたら、やはりおおっぴらにしないに越し
たことはない。アバッキオはようやく心を落ち着かせた。
アバッキオの姓を名乗っているし、外見はそんなに母親似でもないので、自分から言い
出さなければ市長の娘と言うことは判らないと市長側は考えたのだが、迎え入れる聖カタ
リナ女子学院のほうは違った。
なにせ、あと２ヶ月で初等部が終わるという時期に編入してくるという変則的なことを
やらかしているのだから、興味をそそらないわけがない。
折しも、市長選があったばかり、美しい新市長には内縁関係の夫がおり、娘もいるとい
うのは公になっている。
おまけに、市長就任の記念パーティの時のトラブルで、その夫の顔と名前がネアポリス
中に知れ渡ってしまったのだから。
そのギリシャ彫刻のようなハンサムによく似たアバッキオ姓の編入生が市長の娘である
ことは、周知の事実になってしまっていた。
アンジェラの方は、真っ直ぐ尋ねられれば答えないでもなかったのだが、お嬢様達はアン
ジェラを遠巻きにするばかりで、彼女らの顔色を窺いながらこっそり親切にしてくれるの
は、奨学金をもらって潜り込んだサラリーマン家庭の優秀な生徒や、親の悲願で送り込ま
れた成り上がりの娘達だった。
２
学校に通い始めても、アンジェラの笑わない顔は変化がなかった。はっきり泣いて帰っ
てくることはないが、こんなことがあったと弾ける笑顔で報告をすることもない。あの町
にいたころは、週に一度くらいはねえねえと学校での話を聴かせてくれたものだったのに！
「苛められてないか？ 勉強解らないところがあったらおれがみてやるからな？」
「大丈夫」
母親似で表情に乏しい娘が素っ気なくするほどに男親は気が揉める。
「だいたいあの子は不満があっても口に出したことのない子だし。ああっやっぱりちゃん
と届けを出した夫婦じゃないとああいう固い所じゃあ肩身が狭いんじゃないだろうか。ちょっ
とエマヌエル司教様の所へ行って、ベアトリーチェ・ブガッティとの結婚証明書を偽造し
てもらったほうがいいんじゃないか」
「あの司祭様はそんなことしねーよ。落ち付けって、アバッキオ」
ミスタが手を伸ばして心配性の男の背を叩いてやった。
「あ、ああッ、そうだな。エマヌエル司教様にそんな非合法なことをおさせしちゃいかん
よなッ。
子ゆえの闇に迷うってこのことか、ああ、みっともねえところ見せちまったな」
……もとから優等生くさい所はあったけど。
ミスタは表情を消して考え込んでいた。
……１０年の間にみごとにかたぎボケしちまって、まあ。こりゃー料理人としてしか当
てにならねえかもな。もったいねえ。逮捕術を正式に習ってるし、ガタイも良いから、銃
を持ってない奴との近接戦闘じゃあピカ１だったってのに。リハビリさせてるヒマねーだ
ろーなー。
ねーさんに情報上げて注意喚起しとくかね。あーあ、夜はこいつが横にいるからラ
クできると思ったのに、やっぱ夜勤もちゃんと組んどかねーとダメかな？
ミスタは地味に仕事をしている。
「お友達はできないのか？ 本当にいじめられてやしないか？ 公邸に連れてきたってい
いんだぞ？ オフィスの方は見せてあげられねえが、家族用の部分は幾らでも入れてあげ
られるからな、おれがお菓子を焼いてやるし」
毎日追いすがってアバッキオはアンジェラに言葉を浴びせかける。
「いいから」
「勉強は大丈夫か？」
「大丈夫だけど……」
「なんだ？ 本格的についていけなかったら、表のスタッフに言って家庭教師付けて貰っ
てもいいんだぞ？」
「ラテン語が……ちょっと」
「ラテン語なんかやるのか、さすがお嬢様学校だ」
ローマ帝国の公用語だったラテン語は、現在は公用語にしている国はヴァティカンくらい
だが、１８，９世紀までは公文書、外交文書、学術論文はラテン語で記すのがならいだっ
たために、上流では必須の教養になっていた。近世の王族など、自分の治めている国の言
語はしゃべれなくてもラテン語の読み書きだけはできたものだという。そうでなくても、
声楽や哲学、生物学の学名とラテン語は細かいところに生き残っていて、教養として修め
ておくに越したことはない。これがカリキュラムにあるというだけで、そこが将来支配階
級となる上流階級の子女を対象にした学校と判断できるのだ。甚だしい場合には、同様の
理由でギリシャ語のある学校もある。現在の社会生活において、言語としてのそれが必要
とされることはほとんど無いが、寄宿学校に放り込まれた思い出のあるお育ちのいいオジ
サンと世代を超えて盛り上がるには、ヴェルギリウスの詩の暗唱で難儀したとか、どうし
ても過去時制の活用が覚えきれなかったなどというネタが効くのだ。ここのところで、ど
うも旧植民地出身者や成り上がりは脱落する。我が子にだけはそんな思いをさせたくない
と、ちょっと金を持った親が名門校にすがるわけである。
「ついて行けてるとは思うんだけど、時々……」
「なんだ？」
「発音がおかしいって笑われるの。……カテリーナって子がいつも」
具体的な人名を出すとき、息苦しそうな顔になる。アバッキオも釣られて胃の辺りが締
め付けられる。
「それは……」
漁師町で育ったので日常会話が訛っていると言われることは覚悟していたのだが。アン
ジェラは気をつけてＴＶなどで正しいアクセントを身につけるよう心がけてきたようで、
気になる訛りはついていなかった。しかし、教えた覚えもないラテン語が訛っていると言
われては、アバッキオは降参するしかない。
……マキーシーのイグナチオ司祭様は訛ってたかもナァ。
「今度おれがお世話になった司教様の所に行ってみような。エマヌエレ司教様は発音綺麗
だったと思うし」
とりあえずの解決策はそれだった。
３
その頃、最高学年の最後の学期ということで、保護者参観日と保護者会が行われるとい
う知らせを受けてアバッキオは色めき立った。
「な、なあ、なに着てったらいいんだ？ モーニングまでは行かなくていいんだよな？
普通のちょっと気合いを入れたスーツか？ 頭刈っていった方が良いか？ ふつうに七三
とかオールバックとか？」
狼狽えていたと言った方が正しいかも知れない。
「別にいつも通りでいいから。髪の短いお父さんなんかお父さんじゃない」
嬉しいことを言ってくれる。まあ、野暮天で極端に走るアバッキオのことだから、髪を
切るとなると潔くクルーカットまでいってしまうので、市長閣下の嘆きを思えば止めるに
越したことはない。
「やっぱ母親が行かないとダメなのか？ 一応あいつには日程知らせておくけど、今やっ
と日常がちゃんと回り始めたところだから、飛び込みで昼に１，２時間はちょっとキツイ
と思うぜ」
「いい、お父さんで」
「済まねえな、アンジェラ」
最近は、抱きしめるとうっとうしがるので、せめて頭を撫でてやる。ケアが行き届いて
つやつや輝いているのは父親を見て育ったおかげだ。
「結構シングルマザーのとことかもあるのよ。大丈夫。アリサのところも会社が潰れてご
両親は離婚したって」
「そうか」
「お父さんとお母さんが愛し合ってるのは解ってるし、こうやって一緒に暮らせるように
なったんだからワガママは言わないわ」
「大人だなあ」
アバッキオは娘の成長を喜んだ。
「だが、あとで蕁麻疹だしたり、食い気に走って部屋から出られねえくらいに太ったりさ
れるくらいなら、多少はワガママ言ってくれた方がいいんだぜ？ 解ってくれ」
「じゃあ、お母さんとのデートまで行かない程度にキメてきて。マキーシーのとき、お父さん
が来ると先生までぽーっとなるの、見ててとっても得意だった」
お年頃の娘にちょっとはにかんで言われると、父親は勇んで胸を張った。
「おう！」
「門を入るときには守衛さんにこのＩＤを必ず見せないといけないの。１枚しか取らなかっ
たんだけど……」と、アバッキオの顔写真入りのプラスティックのカードを出してきた。
「一応貰っておいたらどうだ？」
「うん……ナランチャの分はあるけど。ナランチャの顔写真と名前入ってるから、ナラン
チャ以外だと止められるから気をつけてね」
「厳重だな」
「まあね……」
参観日当日、アンジェラはもの言いたげな視線をブチャラティに向けたが、結局何も言
わずに出かけていった。
「行って来まーす！」
元気な挨拶は運転手のナランチャのものだ。
「聖カタリナってレヴェル高いよなー。みんなお嬢様で、若い頃なんか、シマが違うのも
あってとても声かけられるカンジじゃなかったよ」
「もしかして、だからごり押ししたの？」
後部座席からアンジェラが呆れた声をかけた。
「ははははーこの年で足踏み入れてもなんもないけどねー。おれじゃねーよ、ミスタだよ？」
「ホントにもう」
「でもまあ、いろんなひとと知り合いになっといた方が人生楽しいじゃん？ アンジェラ
もお嬢様とかお坊ちゃまとかいろいろ紹介してもらっとけよ」
「そうね」
「今日午前中で終わり？ 迎えに来るのはおれだと思うけど。一応言っとくと、昼飯はう
ちでリッカルドさんが用意してくれてる。友達と買い食いはアバッキオがゆるさねーから」
「解った」
「じゃ、頑張ってこい」
「ええ」
高級車が渋滞を起こしている学院前だが、油断無く門を入るまでアンジェラを下ろさず
にナランチャは仕事を済ませた。
４
３時間までは通常の授業がしっかりあって、午前中最後の授業が参観に当てられていた。
お嬢様達は今日は自分の母親はどんなスーツを着てくることになっているとか、わざわ
ざ自分のために父親が仕事を抜けて飛んで帰ってきてくれるだの、朝から少し興奮して囁
きあっていた。
囁いているのは生徒ばかりではない。
保護者たちは時間に合わせ、気合いを入れたおしゃれで少しずつ集まり始めていた。
……あら、ごきげんよう。あなたいつ見てもおきれいで。
……まァ、あなたも。そのアンサンブルとってもお似合い。あなたはそういうお色がとっ
ても映えるわ。うらやましいこと。
などという社交辞令の応酬にはじまって。
……でもこの野暮ったいＩＤカードがねえ。
……これを付けていないと校内でも誰何されるんですもの、しょうがありませんわ。
……まァ、あの方はどなた？
……たぶん、あの編入生のお父様だと思いますけど。
……少し前に、新聞に顔写真が載りませんでした？
……ってことは、市長の！？
……どこかの博物館から抜け出してきたみたいじゃありませんの。
……アルプスの向こうの血が入っているのね。ワーグナーの楽劇のヒーローのようだわ。
……身体をちゃんと鍛えてらっしゃるのね。まだお若いし、とっても、……芸術的なス
タイルをしていらしゃるわ。うちの夫とは大違い……。
……お髪（ぐし）がとっても素敵。北欧の方の氷の糸を紡いだようだわ。
……あちらのお嬢さんもそっくり……。
もう始業の鐘は鳴って、教師を待つだけの教室は僅かにざわめいている。集まった保護
者、多くは上流の婦人達が見慣れぬ若い男の姿に興奮しているのだ。当のアバッキオは慣
れているので、内心汗をかいて赤面しつつも、やや額に筋を立てて気むずかしげな表情を
して見せて取り繕っている。
……やっぱり。
アンジェラはもう、顔を上げられなくなっている。マキーシーにいた頃から、ハンサム
な父親は人気の的だったが、幼い頃から町の人に溶け込んでいた海辺の町とは違って、こ
こではアンジェラは新参者なのだ。まるきり他人の振りができればいいが、不運なことに（い
つもはそう思ったことはないが）父にそっくりな顔立ちときている。やっとできかけた友
達との関係が、あの美しすぎる父のせいで気まずくなったりしないかとアンジェラは思い
を巡らせた。
「おはよう、皆さん。今日も一緒に勉強をしましょう」
深い茶色の髪を夜会巻にまとめて襟の高い純白のブラウスを着こなしたリアーリオ教諭
が現れた。伝統ある女子校で教えることにプライドを持っていて、一切妥協をしない、そ
のようなスタイルが地味だが品格を感じさせる着こなしに見て取れる。女生徒達は立ち上
がり、一礼した。
授業が始まって少しした頃、廊下の向こうから微かなざわめきが伝わってきた。
……少し遅れてしまったか。これでも大車輪で仕事を片付けて抜けてきたんだが。ああ、
授業の迷惑になるからくだくだしい挨拶は抜きで。教室はこの奥で？ 結構。娘がお世話
になっています。この度は無理を聞いていただいて感謝しています。やはり大切な娘です
から、信頼できて伝統もあるこちらをご紹介していただいて。ええ、フェリーニ上院議員
のお嬢さんとは懇意にさせてもらっています。
抑えた声は、教室までは届いていない。しかし、誰か大物が現れたことは皆感じ取って
いた。
「失礼。遅れてしまいました。どうかお続けください」
後ろのドアを開けて入ってきたのは、ローズ色のスーツを身に纏ったブルネットの美し
い女性だった。今やネアポリスで一番有名な公務員！
日中、学校を訪問するというので光る素材は避けたらしいが、濃いピンクがかった赤に
３センチ以上の大きさの目立つ黒の羽模様が一面に絹糸で刺繍され、型じたいはクラシカ
ルなテーラード・スーツであろうと思われるのに、なんともいえない迫力を醸し出してい
る。無粋なＩＤカードなど付けてはいない。顔で押し通ってきたと見える。生物界の警戒
色、虎やスズメバチの黄と黒のように、一目でこのひとを関わり合ってはいけないと知ら
せてくるのに、目を離せない！ この服のセンスは他の誰とも間違いようがない。誰もこ
のひとのファッションを見習おうとは思わないが、誰がこのひとにそこら辺で売っている
誰にでも似合う服を着せようと思うだろうか！
……ベアトリーチェ・ブガッティ市長閣下だわ！
参観の母親達、教室の生徒達、それから密かに教師達も色めき立った。
教室に入ってきたのは市長だけではなかった。
……まァ……。
知らず、母親達から溜め息が漏れる。
やや着崩した黒のスーツ、あっちこっちてんでに跳ねている収まりの悪い黒髪を、オレン
ジのバンダナでまとめ上げていて。大きな目が人なつこく笑みをたたえてちょっと挨拶し
てみせる青年。
「アンジェラー！」
小声で声をかけて軽く手を振ってみせるのを、横にいた男が乱暴に頭を小突いてたしな
める。
ハードな毎日が自然に鍛え上げた、野生動物のような筋肉をした身体をなんとかスーツ
に納めて、いつでも銃を抜けるようにジャケットの前を開けて油断無く目を光らせている
ニット帽の男。不敵な笑みがいつも唇には浮かんでいて、とてもその帽子の下やジャケッ
トやパンツのそこここに無尽蔵に予備の弾丸があるとは窺わせないでいる。
参観のための資料を市長の代わりに手にして、手帳を繰りつつ低い声でスケジュールの
確認を行っている背の高い青年。こちらは格調高いスーツを折り目正しく着こなしていて、
公の仕事を取り仕切る秘書官と見える。
それぞれが目を楽しませる市長の側近だ。
……市長は面喰いでいらっしゃるっていう噂は本当なのね。
皆、目を見交わしあっておのおのが持つ情報を確認した。
「やあ、目立ってるぞ、男性も少しは来てるが、ダントツだ」
市長が来るまで教室内の視線を集めていた男性に真っ直ぐ近づいていって、市長は満面
の笑顔で小声で話しかけた。
「あんたの方が目立ってるぜ。
なんだそのパパゲーナみたいな模様は？」
度肝を抜かれてすくみ上がっていたアバッキオは、咳払いをして言葉を返した。
「ああ、昔風の学校じゃあペンは羽根ペンかなって、スカルラッティさんが。参観日仕様
だそうだ」
だから型紙は超正統派のテーラード・スタイルで、としれしれと言ってのける。
……服地がそれじゃあ全然正統派に見えないって。会話が聞こえていたものたちは全員、
内心で突っ込んだ。
「……なあ、バカには見えない服地を勧められたりしても買うんじゃねえぞ？」
疲れた様子でアバッキオが釘を刺した。一応。
「おまえの冗談は面白いな。残念ながらそういうことになっても、マッパの上に着たりなん
かしないからな、カルロッタの店の下着の宣伝になるだけの話だ」と、麗しの市長閣下は
歯を見せて笑う。
「Ｂ．Ｂ．ッ！」
「しっ、授業の邪魔をするなよ、アバッキオさん」
夫婦の会話はそれで終わって、授業はなんとか始まりそうだった。
５
「それでは教科書の音読を、出席番号１番、シニョリーナ・アバッキオ」
「はい」
アバッキオの顔が少し済まなそうに曇る。最初の４文字までＡとＢなのだ、ＡＢＣ順の
名簿では１番を誰にも譲ったことがない。一番に当てられて、可哀相に、とまた心配性の
お父さんはパトカーが青いのもネアポリスの海が青いのも自分のせいのように縮こまる。
アンジェラが席を立って、よどみなく読み始めた。所々、単語の語尾のところでクスリ、
と誰かの笑い声が漏れる。一番後ろの席の金髪の女子生徒のようだが、他にもいる。
……あれがカテリーナって子か。
アバッキオはその貴族的な鼻筋をじっと見つめた。
「……レックス グローリエ」（栄光の王よ）
……あらあら。
……いやだわ、字も読めないのかしら。
「お静かに。今日は皆さんおうちの方の前ということで少し寛いでいますね」
教師が冷ややかに注意した。
アンジェラは少し声を震わせたが、顔にはなにも出さずに続けた。
「……ミゼレーレ ノービス」（我々をあわれんでください）
抑えきれないくすくすという笑い声が教室に響いた。
「そこ！ シニョリーナ・アバッキオ。あなたはいつもそこを間違えますね。暗唱ではな
いのだから教科書をよく見て？」
「すみませんリアーリオ先生」
アンジェラはさすがに羞恥で真っ赤になりながら謝った。この単語は何度直されても口
が勝手に動いてしまうのだ、おはようの挨拶はボン・ジョルノと頭を使わなくも出るよう
に。
その間に、教師は板書を始めていた。
「いいですか皆さん、この構文は主語、この前の節、関係代名詞で長く修飾されているこ
れ、と動詞、そして目的語が来ます。普通ならここは与格を取りますが、ミゼレーレは属
格支配の動詞なので、目的語ですが、ここの名詞は属格になります。我々を、ということ
なので、ノービス、ではなくてノストリ。ご覧なさい、教科書はそうなっているでしょう？」
「はい先生」
「シニョリーナ・アバッキオ、あなたはもしかして、教会によく行きますか？」
「はい？」
「グローリア固有文をそらで言えたりするのでは？」
「どうでしょう？ 父が教会音楽が好きでよくかけていますけど」
「グローリア！ イン エクシェルシス デオ。（天にては神に栄光あれ）
次が解りますか？」
中年の女性教師は、グローリアで始まるミサの祈りの言葉をアンジェラに問いかけた……。
「エト イン テッラ パクス オミニブス ボネ ヴォルンターティス（そして地にて
は善き心の人々に平和あれ）……？」
「よろしい」
……最初ぐらい誰だって覚えてるわよねーえ、と、独り言にしては大きすぎる声が上がっ
た。カテリーナだ。
「お静かになさい。次は？」
「ラウダームス テ ベテディチムス テ アドラームス テ グローリフィカームス
テ（我ら主を褒め、主を祝福し、主を崇め、主を讃え奉る）……」
ミサの中心部分、主、イエスキリストを讃える歌の部分だ。ミサに出席している皆は緊
張が保たずに意識を別に向けてしまう時間帯の言葉を、アンジェラは確実に記憶していた。
マキーシーの教会では、友達がちょっかいをかけてきても横に坐っている信心深い父親がお
行儀よくと凄んだので、アンジェラはじっと祈りの言葉を聞いていたのだった。おまけに、
なにか引っかかることがあるとこの内省的な父親は宗教曲をエンドレスでかけて鬱に入り
込む！ 長大なミサの文句もアンジェラにとって耳タコ状態だった。
祈りの言葉は最終章に入っていた。
「ミゼレーレ ノービス（我々をあわれんでください） あッ」
「そう。あってはならないことですが、グローリア固有文は文法間違いをしているのです。
続きを」
「クゥオニアム トゥ ソールス サンクトゥス、トゥ ソールス ドミヌス、トゥ ソー
ルス アルティッシモス イェズ クリステ（それは主のみ聖にして、主のみ主にして、
主のみいと高ければなり、イエス・キリストよ！）。
クム サンクトゥス スピーリトゥス グローリア デイ パートリス アーメン（精
霊と父なる神の栄光と共に アーメン）」
アンジェラは、居並ぶ上流の保護者達を前に長い典礼文を完璧に暗唱してのけた。
「ベリッシモ！ 皆さん、シニョリーナ・アバッキオは正しきキリスト教徒です。
ラテン語は教会の言語でもあります。皆さんも、大昔の言葉だと思っていい加減な気持
ちで学ばないで、主に近づくための言葉として考えてみてください。
ただし、シニョリーナ・アバッキオ、これで解りました。
あなたのラテン語には発音にくせがあると思っていましたが、それは音楽で覚えたから
なのですね。一般にミサ曲、とくに演奏会用のものは、教会式という新しい発音で歌われ
ることが多いのです。けれど、学校のラテン語は、伝統的に古典式です。今の部分で言う
なら、教会式はａとｅの二重母音はエと発音してしまいますが、古典式では見たまま、ア
エと言います。『レックス グローリアエ』、このように。以後注意してください」
「はい！」
アンジェラは、ここ１ヶ月の引っかかりがとけて顔を輝かせた。
「皆さん、今日ここで学んだことはラテン語のことだけではありませんよ。
ひとが何度も同じ間違いするときには、このように、理由があってのこともあるのです。
そして、必ずしも間違いとは限らなかったりもします。そのようなときに、原因を深く
考えずに表面だけで直したり、ましてやそれを笑いものにすることは正しいことではあり
ません。立ち止まって、よく理由について思いを致してみることが大切なのです。
以上です。来週は次の章に入ります。皆さん予習と、コラムの詩を暗唱してきてくださ
いね」
「良い先生だなァ」
アバッキオは頬を染めて感じ入っていた。堅物としては、手塩に育てた娘がこんな大勢
の前で正しきキリスト教徒ですと褒められて、これ以上嬉しいことはないと思っている。
６
生徒が終わりのホームルームをやっている間、保護者達は中等部への進学の説明会があっ
て、別会場へ移った。お付きの連中にさらに夫を従えてその場に現れた市長に、金髪の貴
婦人が声をかけた。
「市長閣下、ごきげんよう。あたくしはＡクラスのカテリーナ・バッジオの母でドロテー
アと申します。今後とも宜しくお願いいたしますわ。それでは、やはり編入生のアバッキ
オさんは閣下のお嬢さんでいらっしゃるのね」
……これはさっきの子の母親なんじゃないのか？
鼻の線に類似を認めてアバッキオが警戒を強める。名家とすぐに思い当たる姓ではない
が、もったいぶった話し方といい貴族趣味を隠さない家柄なのだろう。着ているスーツも
手に提げたバッグも、見るからに金のかかったブランドものだ。
「ああ、わけあって役所には届けを出していないもので、父親の名を名乗らせているんで
すよ。立場上、こちらの学校や父母会に特別の便宜を図ったり、活動に参加することはで
きませんが、日頃の活動は彼がきっちり受け持ちますので、どうぞお声がけください。田
舎の父母の会では会長も務めた事があるようですよ」
「あ、はい、おれでできることならなんでもさせていただきます」
公の場でＰＴＡの仕事を押しつけると宣言されて、アバッキオは冷や汗をかいていた。
「まァ、それは心強いわ。宜しくお願いします、アバッキオさん」
バッジオ夫人は唇で笑って見せた。目は笑っていない。
「市長はローマ大学でいらしたんですって？ 優秀でいらしゃるのね。
あなた、年も同じぐらいだし、懐かしい話ができることでしょう。学科も同じだったん
じゃなくて？ 法律で」
優雅に視線を巡らせた先に、その夫とおぼしき仕立ての良いスーツに身を包んだ紳士が
いた。
場は、凍り付いた。
コンサルタントのベアトリーチェ・ブガッティがローマ大学を出たというの紙の上だけ
の話だ。上流の人間は、一部は自分の目で見てそれを知っているし、下町のものは、本当
の彼女がその年頃にどこでどうしていたかを知っている。昔はある程度の偽装をしていた
が、今ではそれを知ろうという者には制限が無く自由に伝わっている。
「ああ、大学じゃあ、見たことねえな。バイト忙しかったんだってな？ 親がいないから
奨学金取ってて」
よく響くがやや砕けた言葉遣いで、そのやり手の社長は口を歪めて笑って見せた。
「だが、Ｂ．Ｂ．だからってうちの大学であんたを知らないやつはいなかったと思うぜ。
アレクシウス教授のゼミが揉めたとき、バシーッと問題を整理して解決したのは伝説もん
だぜ。おれのダチのあの大学の者は、みんなあんたのことは、しゃべったことはねえけど、
知ってるって言うだろうよ」
一同、身じろぎもせずその言葉を聞いていた。ブガッティ市長も、僅かに目を見開いて。
「あなた……」
学友一同が市長のアリバイ（不在証明ではなく在籍証明だが）を保証すると言ってのけ
た社長は、首をちょっと振って見せた。
「ドロテーア、ちょっと、ネクタイ締め直してくれるか？ おまえがやってくれねえとど
うも緩んできて困るぜ。
ではみなさん失礼」
紳士は妻を伴って部屋を出た。堂々と。
７
「……おめえのうちが落ち目になったのがよおくわかったぜ」
廊下を歩きながらバッジョ氏は小声で妻をたしなめた。
「なんです？ みえみえの嘘を吐いて。そのしゃべりもいい加減改めてくださいな、カテ
リーナに恥をかかせないで」
手を取られて早足に必死で追いつきながら、その妻は噛みついた。
「媚びを売るべき相手と見下して恥をかかせていい人間の区別がついてねえ。
ゴンザーガのオッサンみたいに崖からダイヴしたいのか？ 警察発表はされてねえが、
あの車は蜂の巣になってたんだぜ？ 上院議員もな。あのニット帽はガンマンだ。火薬く
せえし、こんな気取った場でジャケットの前開けてるってのは、いつでも銃抜きますって
事だぜ？ こんなとこにまでガンマン連れ回してきやがって……やっぱあの女は怖（こえ）
え。
昔っから、おめえら上流の奴らってのはてめえの知ってるカビの生えた家の周り以外の
生まれのものを下に見やがって……おれのことも。
おめえこそ、頭の良い立ち回りってもんを覚えておれの商売の邪魔にならないようにし
ねえと、もう、おめえの家の格もオヤジさんの顔も必要ねえほどに商売はでかくなってるん
だからな、おめえも、もう若くも美しくもねえんだから、追い出すぞ？
カテリーナにもみっともねえ真似させんな」
「ディエゴ、あなた！」
「おれの商売や、おれの娘の命を危うくさせたら承知しねえからな」
「……承知しましたわッ」
うつむいて、しばらく唇を噛んでいたその妻は、しばらくして返事をした。
「良い返事だ、奥様。ドロテーア、おれの守護天使様、おまえと末永く添い遂げられるよ
うに努力してくれよな」
丁度そこは柱の影で、成り上がりの社長は妻にキスをした。
中等部のカリキュラムについての説明を聞くことは夫にぶん投げて、多忙な市長はさっ
さと庁舎に戻っていってしまったので、アバッキオはひとり２階の会議室に座っていた。
説明の内容はあとでムーディ・ブルースに再生させるから手ぶらである。それでも一応話
に集中しようとしているのだが、目がどうしても窓の外へ向いてしまう。高い塀を巡らさ
れた校庭の、その塀がどうも違和感を感じさせる……と、さっきからなにかが塀の上ひょ
こひょこ見え隠れしていると思ったら、必死で取り付いて上ってきた中年男性だった。頭
頂部がやや薄くなっているので年齢が知れる。もう生徒達は解散して、三々五々校門に向
かっているが、丁度アンジェラが２，３人の生徒達と話しながら昇降口から出てきたとこ
ろだった。
……ァリサ！
男はひとりの生徒に声をかけ、なんとか塀を乗り越えて落ちるように校庭に入り込んだ。
よろめきつつも目的の生徒に近寄り、手を取って引き寄せた！
……キャーッ
少女達は逃げ散った。
……来るんだ！
切れ切れに険しい声も聞こえる。
アバッキオは立ち上がった。ヴェランダへ出るサッシを開け放つと、そのまま地面に飛
び降り、校庭を駆け足で横切ると闖入者に飛びかかった。
「何をするッ！」
生徒を掴んだ手をねじ上げ、すぐさま地面に押さえつける。
「それはこっちの台詞だッ！ 誰に頼まれた？ 昼間ッから堂々と若い娘を誘拐なんて、
恥を知れッ」
「違ッ」
「行きなさいッ、そして、警備員を」
アバッキオは襲われていた生徒に短く言った。呆然と腰を抜かして地面に坐り込んでい
たが、
「やめて、パパを放して！ 殺さないで！」
意外や、その生徒は身を起こすとアバッキオの腕に取りすがった。
「お父さん、アリサのパパを放してあげて。
ミスタもナランチャも銃を下ろして」
冷ややかな娘の声に、アバッキオはふと我に返った。
目の前には、アンジェラを背に庇ったミスタとナランチャが、銃口を男に向けて立って
いた。お嬢様の（ご友人の）危機に、ブガッティ市長のボディガード達はちゃんと反応し
たというわけだ。
……いやーお見事。やっぱリハビリいらねーわ。天性の警察犬。
ミスタは愉快そうな目のいろで独りごちていた。
二階の窓にはお母様達が鈴なりで。
８
帰宅して、家族が顔を合わせたときに、アンジェラが事情を話した。
「アリサのパパ、会社が潰れて破産して、ママとは離婚したんだけど、親権はママに取ら
れて、全然面会させて貰えてなかったんだって。学校は、ＩＤ登録してないと入れてくれ
ないし。せめてひと目って覗いてみたら、目の前を通ってるんで我慢できなくなってつい
手が出ちゃったって。
別にＤＶとかは……ちょっとはあったのかな。
最近多いらしいわよ。学校の出入りの時に離婚して取られた子を連れてっちゃうの。だ
から、親といえどもＩＤは必ず提示して頂戴って」
「あいつは顔パスで入ったじゃねえか」
アバッキオはふて腐れた。
「市長だから！ 特別！ ほんと無理矢理に入ってきたらしいわよ。あんなにいっぱい取
り巻き引き連れてッ……！」
アンジェラの無表情はそこまでで崩れた。
「だいたいなんでお母さんはあんな派手な恰好してくるのよッ！？」
「いや、あれは参観日仕様だし。色は上品なローズだし光り物は着けていないし露出だっ
て全然だし、なあ？」
ブチャラティは平然と答えた。ネアポリスのふつうのマンマが参観日に暴走したおしゃ
れをして子供に怒られるってのはこういう感じかとしみじみしながら、傍らの夫に同意を
求める。
「いや、あれはちょっと……」
夫たるもの妻を庇わねばと思いつつアバッキオは腰砕けになってまた自己嫌悪にはまり
こむ……。
それを見てさらにアンジェラは逆上した。
「もおお父さんもお母さんも学校へは来ないでええッ！」
アンジェラが顔を朱に染めて絶叫したので、市長夫妻はそれぞれ反省のていを取って見
せた。アバッキオは真っ赤になって縮こまり、ブチャラティはとぼけた顔なりに頬の所を
少し指でかきながら軽く頭を下げ……それは本当に本人なりで、並べてみるととても同じ
目的のポーズには見えなかった。
３１−０３ー１１
おまけ。
それからしばらくアンジェラはＶＩＰ待遇でちやほやされて、それが落ち着いたころ。
「あなたのお母様の話なんか興味ないわ。あなたのことを教えて」
切り口上に、アンジェラは身構えた。眼鏡をかけた大人しい生徒としか認識していなかっ
たが、相対してみるとその眼鏡の奥はよく光る金の瞳が印象的だ。
「その見事な髪はいったい普段どんなケアをしているの？」
にこりと笑うと、輝くような魅力を見せる。アンジェラは息を吐いた。
「ありがとう。ええ、そんなに高価（たか）いものは使ってないんだけど。ブラッシング
と、食べ物に気を使っているかしらね？……」
「どこのシャンプーか聞いてもいい？ 食べ物って？ やっぱりタンパク質？」
あとは、おたがい年頃の娘らしい会話が広がっていった……。
蛇足。
うちの娘もお年頃になって、
「いつ来るの？ 絶対来てね？ ちゃんと始まる前に来てね？」から、
「絶対来ないで！ 来ても声をかけないで！」になりました。寂しい。
仙台では父の日にぶつけて６月に休日参観日があるので、旦那様も何度か行ったことが
ありますが、旦那様休日だからって、アロハシャツにあやしいサングラスで、暑いからっ
て柱の所に寄りかかって扇子を使っていたら……その筋の人と間違えられました。
ブチャもアバも黙って大人しくしててくれれば自慢の両親だろうけど……。まあ、いい
ギャングはかたぎに迷惑をかけないそうだし。もうギャングじゃあないし。
ラテン語は大学でちょっとやりました。うちは音楽科と哲学科があったから。……もう
やりたくありません。声楽では教会式が普通だからローマ字読みでいいんですが、大学の
ラテン語は古典式で、母音とか、子音が重なったときの読み方が違っていて、笑われない
までも違和感があったのは実話。ミサ曲も、エリザベス１世ぐらいの古い時代のものだと、
古典式で歌います。教会式なのはシューベルト以降かな。こだわる指揮者だと、
「そこは濁って！（スじゃなくてズ）」とか、歌ってる最中にダメ出しがきます。
でも、こんな文法のネタは小学生向けじゃないよね、ごめん。
上流階級だとなんとかの詩を暗唱ってネタがいろいろ出ますが、向こうの基本らしいで
す。「キャンディ・キャンディ」にも暗唱シーンあったと思いますよ。フランス語かな？
やっぱりアクセントが田舎くさいとかいって苛められてました（鉄板かい！？）。いや、
こっちも百人一首覚えさせられたりするじゃん。ああいう感じ。百人一首は人前で言わさ
れたりしないけどね。こういう訓練してるからやつらはしゃべり馴れしてるんだなあ。ご
めん、それでラテン語の詩って知らないからミサ曲の歌詞にしちゃった。その辺はスルー
で。
ただ、メロディついてると結構覚えられるもんです。ほら、おばさんが第九を譜面持た
ずに歌ったりするでしょ？ 繰り返し部分もあるけど、４楽章の２０分、勢いで覚えちゃ
うのです。わたしも、若かったせいか、第九はもちろんブラームスとか覚えた覚えた（ブ
ラームスは曲を作る方の人ですが）。元素の周期表とか、覚えられないひと、空耳ででも
曲を付けてみよう！
修正。
すいません、なんかおかしいと思ってたら、「ムカーイ」→「マキーシー」。訂正しとき
ました。
ムカーイはアバッキオの田舎の山の町じゃん。自分で設定した地名なのになんで間違える。
大変失礼しました。（１１年４月２６日）