スクエア
その朝（１４）
（これもパラレルってことで）掟破りの女体化の二乗（スクエア）
要するに、彼は欲求不満だった。その男を拾って以来というもの、彼の大好きな「ヒー
ロー」であるところのブチャラティはもう人が変わったようになってしまったし。
「ブチャラティー！ もー次いこーぜー！ 一緒だって！」
「あ、ああすまない。でもやっぱりここはそっちのラヴェンダー系の方に……」
「ブチャラティはそんな女オンナしたやつより、スカッとした匂いの方が合ってるって！
そんないっぺんに匂い嗅いだって鼻がバカになってもうわかりゃしねーよ！」
小間物屋でコロンの棚に捕まってしまって、５，６本もテスターの瓶を並べて悩みこん
でしまったリーダーは、しゅん、と急に理性を取り戻して頭を垂れた。それが可哀相になっ
て、
「……一番最初のヤツが良かった。爽やかで、いやみがなくて、ブチャラティの肌にも合う
と思う」と、目を逸らしてボソボソと思うところを述べてしまう。
「そうか？ ありがとう！ じゃあ、これにしよう」と、すぐさまブチャラティは顔を輝
かせて勘定を済ませた。
「済まないな、待たせてしまって」
頬は血色良く艶やかに輝いて、その笑顔を見ると、待たされたこともどうでも良くなっ
てしまう。もともときれいなひとだったけど、なんて綺麗になったんだろう、と、しみじ
みした感動を覚える。もしかして勇気を振り絞っていつもはしないお買い物をして少し昂
奮しているブチャラティと、いつものようになんでもない会話を交わしながらパトロール
を続ける。
ブチャラティが幸せに輝いているのは街のみんなにも一目瞭然なようで、通り過ぎる道
からも、営業トーク込みできれいになった、見違えた、と声がかかる。それにいちいち機
嫌良く応じながら、焼き菓子を振る舞われたり、ちょっとした相談事を持ち込まれたり、
深刻な事態の兆しみたいなことを知らされたり。そうやって、足を棒にしてやっとアジト
にたどり着くと、
「無理ですから！ 意味がありません！ ぼくはイヤです！」と、キッチンからなにやら
楽しそうな声が聞こえてくる。
「イヤ別にそんな頭ッから否定することもないだろうが」
いつもは口を開くのも大儀そうに、「あァ」とか、「いや」としか言わないあの男が、な
にやら言葉を尽くして誘っている。
「両手を使えばいいことじゃないですか、それで省ける手間なんて微々たるものでしょう！？
ぼくようやっと両手でできるようになったところなんですよッ！」
「いいからやってみろって！ その年で失敗を恐れてどうする！？」
「無駄になるじゃないですか、絶対失敗しますって！」
「やって見なきゃわからんだろう、ほら、ちゃんとボウルの縁に当てて」
……おまえら仲良しになったよなー。
ナランチャはつめたい目で楽しそうに食事の準備をしている留守番組を見やった。
「ほら！」
「わ、割れたッ！ ブチャラティ！ ぼく右手だけで卵割れましたよッ！」
フーゴが頬を染めてキッチンから半身を覗かせた。ブチャラティは、疲れて喉も渇いて
いるだろうに、律儀に相手をしてやっている。
「あーそー、良かったねー」
リーダーに冷たい飲み物を出して勧める役目は自分が引き受けて、ナランチャは無感動
に相棒に声を掛けて椅子を引いた。
「飯、まだ？」と、畳みかける。二人で半分遊びながら仲良く食事の支度をしている間、
自分たちは仕事をしてきたんだと言外に滲ませながら。
「あ、待ってて、もう少しだから……ほら、でもここに小さいかけらが入っちゃってるじゃ
ないですか。イヤなんですよこういうの、ぼく。やっぱり両手で確実にやった方が」
「神経質なヤツだな」
「ひとに食べさせるんですから、やっぱりちゃんとしないといけないでしょう」と、ここ
に腹を空かしている人間を無視してまた二人だけの世界に入っていってしまう。
まったく面白くない。
ブチャラティは日報をつけにオフィスへ上っていってしまったようだ。
ナランチャは溜め息を吐いてテーブルの上の雑誌を取り上げた。
アバッキオを拾ってチームに入れた張本人のブチャラティがやつに参ってしまっている
のはまあしょうがないにしても、自分を拾ってくれた相棒のフーゴまで、やつにかかりっ
きりになってしまうなんて、信じられない。きみには関係のない話です、なんて言いなが
ら、二人して頭をくっつけて日がななにやら内緒話をしている。そういうときのフーゴは、
疲れたような苦笑を滲ませていても、青い眼に今までなかったような優しい光をたたえて
いる。いつものクールでキレやすい刃物のような、そう、自分だけに教えてくれた本名の、
戦う大天使のような姿とはまったく違った面が出てきている。
……なんであんなやつなんかに、そんな顔見せるんだよ。
もっと話しようよ。ブチャラティのとんでもない話聞いてくれよ。マリアさんところに
先週から並んでるあの新しい花の名前教えてくれよ。アバッキオとなんの話してるんだよ。
おれ身長伸びてきたんだよ、おまえのこと追い越したかも。なあ、なあ、おれの話聞いて
くれよ……。
文字を追い続ける気力がなくなって、音を立てて雑誌を閉じた頃、フーゴがキッチンか
ら出てきた。
「ナランチャ、待たせたね。ブチャラティを呼んできてくれないか」
「なんか今日は手間取ったかな？ そーでもねーだろ？」
料理の大皿を両手に持って、アバッキオが誇らしげに現れる。まったくこの大男は、毎
日毎日、キッチンに立って料理を出して下げるだけのことでどうしてここまで自慢げにな
れるのか。
……たしかに旨いけどさー。
それが、家にいたときはホットミルクの一杯もマンマに入れてもらっていたというのだ
から、その開きなおりっぷりは確かに凄いのだけど。
「別に、シェフは普通男だろ？」
そう言って、自分が言い出したことだからと真面目に賄いを務めている。
そういうことを本人から聞き出してさらっと自分に教えてくれるときのフーゴがまた、
なんとも自慢げで。
なんでそれをフーゴが自慢するんだよと、ナランチャはまた不機嫌になる。
拾ってもらって以来、一番フーゴに近いのは自分だと思っていたのに。
なんだよ。
ブチャラティが下りてきて、昼食が始まった。今日もやっぱり美味しい。
「ナランチャ、もう少し食べる？ これで皿片付くし」と、フーゴがパスタの最後の一巻
きを勧めてくれる。
「ああ、うん」
「じゃあ、フーゴはこっちの鶏肉を取れよ」と、ブチャラティが皿を回してくる。
「あはは、なんかぼく最近太ってきたみたいなんですよね」
「大丈夫、まだまだ標準体重には足りない」と、ブチャラティがフーゴの細い細い手首に
指を回す。ほんとうに、この天使は線が細い。
「サラダもちゃんと食うんだぞ」と、アバッキオが眼配りする。
なんだか楽しい昼食。前はただ買ったものを腹に詰め込むだけだった。たしかに、アバッ
キオが来てくれて良かった。それは本当なんだけど。腹が一杯になって、栄養も採れて……
でも、おれ、なんだかヘン……。
明るい食卓を、まともに見られなくてナランチャは目を伏せた。
「結局山の手には誰も入れないでこのまま行くんですよね？ やだなあ、またパトロール
コースが長くなりますけど」
「効率のいいコース考えておいてくれ。今良さそうなのが網にかかったんで、ポルポさん
に増員をお願いしてるけど」
「１人ですか？」
「ああ、とりあえずな」
リーダーと参謀の会話には、誰も割り込めない。でも、一日の仕事の締めに入っている
証拠だから、大人しく聞いて待っている。
「さあ、もう仕舞いだ。わたしもこれを書いてしまったらもう上がる。おやすみ」
「じゃあ、お先に。お休みなさい」
「おやすみブチャラティ、アバッキオ」
挨拶してアジトを出る。この帰り道だけは、二人っきり。スタンドが出て、願ったとお
りブチャラティーのチームに配属されてから、ずっと。
「気をつけろ？ おまえたちは見た目子供だから」なんてブチャラティに言われて、二人
目を見合わせて、そーゆー舐めたことするやつは返り討ちだよねーと笑いあった。実際、
殺さない程度に痛い目に遭わせたことは何度もある。二人はとてもきれいな子供だったか
ら。昼間連れだって歩いていても、きゃあきゃあ言う声や熱い視線には慣れっこだった。
大好きな、誇らしい親友。誰よりも大切に思ってきたのに。いちばんの秘密も、まだ打ち
明けてくれはしない。
「もう１人入るんだね」
フーゴは機嫌良さそうだ。
「嬉しいのかよ？」
「だって、楽になるだろ？」
フーゴは簡単に答えた。
「だって、アバッキオが入って、なにが良かったって、ブチャラティが夜更かししなくなっ
た」
肩をすくめて、くすくす笑う。
「心配してたんだ。この分じゃ、ネアポリスを締める幹部になるより先に体壊しちまうっ
て」
「顔色は良くなってきてるけど」
「あ、やっぱりそう思う？ ぼくもそう感じてたんだけど」
それは恋のせいなのか、アバッキオが賄いを引き受けてくれるようになったからなのか。
フーゴの優秀な頭脳は、どういう判断を下しているのだろう。
じゃあ、このところのフーゴが妙に顔つきが優しくなってきて、肌も、髪も、輝くよう
に艶やかになっているのも、栄養のせいだろうか。自分の体はどんどん筋肉がついて筋張っ
てきているのに、一つ年下の天使は輝きを増すばかりだ。拾われてすぐは、一緒になって
転げ回ってケンカしたり、ふざけあったりできた。でも、もう、天才児の参謀には、畏れ
多くて触れられない……。
……やっぱ、おれ、バカだしな。
１３で大学にはいるような天才児は、やっぱり大人としゃべっている方が楽しいのかも
知れない。新しく入るメンバーが、また、アバッキオほどの年で本体でもスタンドでもナ
ランチャよりも攻撃力が高かったら、ブチャラティもそっちばっかり頼るようになるんだ
ろうか。
そんなの、嫌だ。
自分を救ってくれたブチャラティをカッコイイと思って、こんな人のために働きたいと思っ
てギャングになったのだ。ブチャラティに頼られない人生なんて、考えられない。年の近
い自分に、フーゴは心を開いてなんでも話してくれたと思っていたのに、自分が知るフー
ゴなんて、とても大きな氷の山の、ほんの水面の上に出ている隅っこだけだったのだろう
か。それはうすうす感じていたのだけど、また新しいメンバーが来れば、新しい面をそい
つにだけ見せて、きみには関係ありませんと笑うのだろうか。
そんなの、嫌だ。
ナランチャはだまりがちになって帰途をたどった。
「最近、きみ、ヘンだよ」
なにを聞いても生返事なのに呆れて、フーゴが言ったとき、ちょうどフーゴのフラット
の入り口にたどり着いた。
「寄ってく？」
ナランチャがチームに入ったとき、ちょうどこのフラットに空きがなかった。「襲撃を
受けたときに、全員が同じ建物を宿舎にしていては問題あるかも」と理屈をつけて、フー
ゴは３軒先のフラットにナランチャの宿舎を調達した。これは不動産屋のジュリオの受け
売りらしく、アバッキオの時も、「帰るのがちょっと面倒な距離がいいんだ」などといっ
てさらに通りの向こうのフラットに決めてきた。たしかにあの距離だと、雨が降ってたり
したら、そのまま泊まりたくなってしまうだろうなとナランチャも思った。ナランチャと
フーゴのフラットの距離は、帰りに寄って、ちょっと話をしてもすぐ帰れる距離だった。
朝も、ついでに誘いに来て、そのまま一緒に来られる近さ。
「ああ」
いつものように、軽い気持ちでナランチャは寄った。
「ＣＤ貸してくれよ」
先週、なにか新しいのを買っていたと思って声を掛けると、
「いやだ、きみいつもちゃんと返さないから」とフーゴは笑った。
「じゃあ、明日探してちゃんと持ってくるから、そしたら引き替えに」
「いいよ、ちゃんと持ってきたらね」と、笑顔が返ってホッとする。
意外と散らかっている天才児の部屋。いいんだ、なにがどこにあるかは解ってるからと、
それを指摘するといつもごまかされる。それは本当で、求めるものはいつも迷わずに手を
伸べたところから出てきた。
「フーゴ、あのさ」
振り向かれて、言葉に詰まる。目に悪くないのだろうか、この天才児の部屋は、節約な
のか、雰囲気重視か、光量を絞ってある。影が落ちて、天使の顔は大人びて見えた。
「アバッキオと最近よく一緒にいるよな」
心の闇を吐き出すときは、気をつけて、必要以上の抑揚をつけないようにしたのに、聞
いた相手はあっさりと答えた。
「ああ、だって、ブチャラティと一緒にさせとくと見てられないもの。かれも間が持たな
いらしいし。いろいろフォローしないと。まったく世話が焼ける大人だよね」と、肩をす
くめて見せる。だが、その眼はきらきらと光ってじつに楽しそうだ。
……この眼なんだよな……。
「楽しそうだぜ」
「全然！ きみも聞かされてごらんよ！ 悩むよ！ ぼくほんとに恋愛観変わったよ、こ
の４ヶ月で！」
両手を忙しく振りまわして、やけに力を入れて話すけれども、フーゴは気づいていない
のだろうか、その顔ははっきり笑っている。
「どんな恋愛観だったんだよ？」
低い声で、ナランチャは絡んだ。
「え？」
「……どんな女の子にきゃーきゃー言われてもすかしてたくせに。どんな恋愛観してたん
だよ？ おまえに人を好きになることがどんなことか、解るのかよ？」
思わぬところを突かれたようで、フーゴは口ごもった。
「だって、あんなきれいで優しいひとが、もう、下手に出て、いろいろ気を遣ってるのに、
アバッキオったら全然ニコリともしないしさ、どうなってんのって、思うじゃんか」
「好きになった相手が、自分のことなんとも思ってないなんて、当たり前だぜ」
「え？ なんで？」
「おまえはきれいでユ−シューだから、ひとに好かれるのなんか、普通で当たり前のこと
かも知んないけどさ」
いつも、自分が物事を解説してやると感嘆して聞き惚れているだけだと思っていた相手
に逆襲されて、フーゴは驚いたようだった。それが、ナランチャを苛立たせる。
「これだけ近くにいて、なんでも解ってるつもりでいるのに、全然分かんないことが急に
起きるんだよ」
「あ、ああそうかな？」
「クリスマスもあいつと二人っきりでさ。なんでおれをハブにするわけ？」
とうとう、ナランチャは暮れからの屈託の原因を口に出してみる。
「だって、きみあの孤児院行くの楽しみにしてたし。彼は彼で家に帰れないって相当落ち
込んでたから１人にしとけないし」
「おまえと行くから楽しかったんだろ！」
「え？ だって」
「おまえと行くから楽しかったんじゃんか！ そんな、おれだけ年も離れてるのに、１人
で孤児院のガキどもに混ぜてもらって、楽しいわけないだろ！」
「ごめん……」
フーゴはナランチャの精神年齢を低く見積もりすぎていたようだった。誕生日が来れば
１７なのだ。普段行き来があるとはいえ、中学生までの孤児院の子供達に混じるには、た
しかに少し大人かもしれなかった。
「おまえ、おれのこと舐めてるよな」
凶暴な嵐が、ナランチャの心の中を吹き荒れた。
「そりゃ、おれはガッコもまともに行ってねーし、おまえに比べたらバカだけどな」
「ナランチャ、そんなことないよ」
地雷を踏んだことを察したのだろう、フーゴがすぐさま否定した。だが、ナランチャに
は今はそれさえもお利口な必勝法に思える。こう言ったらこう、こうしたらこう、と、も
う自分の行動はみんな読まれて、対策を立てられているんじゃないかと。
……じゃあ、思いもよらないことをしてやるよ。
暗い情念に、火が点いた。
ナランチャはフーゴの肩をぐっと壁に押しつけた。焦るフーゴの顔に、自分の顔を近づ
けていく。
「ナラ……」
終いまで言わせずに、唇をふさいだ。長いまつげの奥で、青い眼が、驚きに震えている。
伸ばしたままだったフーゴの手が、やっと体と体のすき間から間に入って、強く胸を押
し返た。必死に距離を取ろうとするその両手を無視して、ナランチャは頭と肩をしっかり
抱いて自分に引きつける。フーゴは足をも使って身を引きはがそうとした。片足立ちにな
り上げた膝を曲げて、ナランチャの体を蹴り避けようとする。顔を左右に振って、ようや
く顔を引きはがす。
「変ッ……」
「……態じゃない。おれは、わかってやってるんだ」
ゆっくりと手を下ろして、ナランチャは親友の胸を掴みしめた。１６の娘らしい隆起が、
たしかにあった。
「隠してッ……」
痛みにか、驚きにか、フーゴは喘いだ。顔は、見たことのないゆがみ方をしていた。
「誰にも言ってない。ずっと一緒にいたんだ……判るよ」
「悪かった……」
さすがのフーゴも、こういうことは考慮に入っていなかったらしい。すぐには言葉が出
ない。でも、最初には謝罪の言葉。ずっと隠していて、悪いという気持ちは持っていたの
だろうか。
「女の子だって、知ってて、好きなんだ。ミケーレ、おまえのことが、好きなんだよ」
また一歩進んで、耳に囁いた。手はまだ胸に触れている。弾力のある丸みを楽しむ。
「や、痛……」
顔をゆがめて背けるのに、またキスをくれてやる。左手をおとがいに当てて、口を開け
させる。目が哀願の色を滲ませる。構わず舌を差し込んだ。大人のキスだって、やってや
る……。
舌が、顎が、忙しくなにか動いて声を発そうとしているが、声の出口をしっかり塞いで、
舌を抑え込んでいるので意味のある言葉にはなってこない。全身は必死の抵抗を試みてい
るのだろうけど、最近デスクワークとおしゃべりばかりの参謀は、とてもナランチャを押
し返す筋力がないようだ。息も絶え絶えに、やっと壁により掛かっていた。ナランチャは
それを察すると、軽々フーゴを抱き上げて、いつもなんの気なしに入れてもらっていたベッ
ドルームへとその身を運ぶ。
「バカッ！ なにを……やめろ！」
ベッドに体を投げ落とし、すぐさま両手を束ねて頭上に片手で押さえつけておいて、宣
言する。
「この先、新しいメンバーにおまえを盗られたりしないように、おまえを、おれだけのも
のにしてしまう」
「嫌だ！ 嫌だぁーッ！」
あまりにも線の細い少女参謀は、渾身の抵抗を続けるだけの持久力がなかった。
涙に濡れた目を虚ろに開いて、フーゴはその時を待っていた。
「……ッ！ ……ミケーレ、愛してるよ」
ナランチャが、大きく息を吐いて、やっと体の上からどいた時に、右手はすかさずベッ
ドサイドのランプを点けた。明々と灯が点る。
「パープル・ヘイズッ！ そいつをジブラルダル海峡の果てまで蹴り出せッ！」
呼び出されたスタンドが、拳は封印したままナランチャを追い出そうとする。
「なっ、フーゴ、そんな嫌だったんならもっと早くに出せば……」と、途中から諦めて従
順になったのを都合良く誤解していたナランチャが頭の悪い開き直りを口にする。右足に
は、あまりに急いで脱ぎきれなかったズボンが下着ごとまとわりついたままだ。パーフル・
ヘイズはそれを許さずに乱暴に足で蹴り転がして玄関から追い出した。
「ぼくまで溶かされてしまうだろうがッ！ ああッ、あの本が手元にあったらあの教授み
たいにおまえの額もかち割ってやれたのに！ このサルがッ！ その顔二度と見せるなッ！」
前をはだけさせられ、袖は通したままのジャケットを背にぶら下げて、よろめきながらフー
ゴは玄関まで出ると、勢いをつけてドアを閉め、施錠した。
「バカヤロー……」
そうして、顔を覆って泣き出した。
翌朝、迎えにいってももうとうに出たあとで、泡を食ったナランチャが顔を出すと、
もうフーゴはオフィスで書類を読んでいた。
「フーゴ……」
「顔見せんなっていったろッ！」
顔も上げずに言い捨てると、書類をまとめて立ち上がった。
「ブチャラティ、今日はパトロール、ぼくが付き合います。なんだか運動不足で、最近」
「ああいいよ。そうだな、留守番ばかりさせて済まなかった」
ブチャラティは何も知らぬげに微笑みを返していた。
……言いつけるつもりかな？
胸に重しをどんと乗せつけられたような感覚に、ナランチャは思わず首を垂れた。
「ケンカか？」
ケンカの種の大男が、無表情に彼を見下ろしていた。
「だからさーフーゴは１３で大学に入れるような天才なワケよ？ なんでも、いっぺん聴
いたらすぐ解るし、すげー複雑な計算も見ただけでぴっと答えだしちまうし。おれなんか
とは頭の出来が違うワケ」
「あァ、そうだな」
夕食に使うのか、これ幸いとタマネギを大量に剥かせながら、アバッキオはナランチャ
の相手をしている。
「おれが少年院出て、うちへも帰れず道でゴミ箱漁って暮らしてたときに、道を、すっげー
きれいな子がさっそーと通ってたわけよ、いつものあんなカンジの服着てたけど、後光が
差してた。それが、おれのことちらっと見て、あー汚いガキって思ったんだろうな、きみ、
ぼくと来たまえって、腕捕まえて、ブチャラティが飯喰ってるレストランに真っ直ぐ入っ
てって。スゲエ迫力で、給仕とか、こ汚い格好のおれを止めることもできなかった。そん
で直立不動で、
『こいつにスパゲティを食わしてやりたいんですが、構いませんねッ』って。全然、ブチャ
ラティが断るってこと考えてない口調で。ブチャラティも、なんでもなさそうに、にこり
ともしねーで、今自分が喰おうとしてた皿を、そのまんまおれに寄越してくれたんだ」
「ほう」
「あんときのスパゲティーほど旨かったもんはいままでねーよ。アバッキオ、あんたの料
理も、そりゃ、うめーけどな」
黙ってアバッキオは、包丁を持ったままの肘でナランチャの頭をこづいた。
「そのあと、ブチャラティはタクシーでおれのこと医者に連れてってくれて、そんときお
れ、少年院で悪さされて、目にばい菌入ってて。そのまま入院さしてくれて、きれいに治っ
てさ、おれもうブチャラティのこと神様みたいに見えて、おれあんたのためにならなんで
もする、子分にしてくれって言ったんだよ」
アバッキオは何も言わずにタマネギを刻み始めている。とろとろに煮溶かす料理のようだ。
繊維に対して垂直に切っていて、ナランチャにも同じようにするように仕草で示した。
「そしたら、ブチャラティはおれのこと殴って。……なぐったんだよ。うちにはいたいだ
け居てもいい、だが、子供は学校に行けって。そんなこと、そんなこと言ってくれる大人
はいなかった……おれにはブチャラティしかいなかったんだよ……なあ、アバッキオ、ブ
チャラティっていい人だよなあ」
「あァ、そうだな」
素直にアバッキオは応じた。タマネギに負けて涙と鼻水をずるずる流し始めたナランチャ
のために、ティッシュ・ペーパーの箱を取ってやって。
「そんでおれはうちに帰ってさ、我慢して中学ちゃんと出たよ。年少がえりのおれなんか、
だーれも相手にしてくんなかったけど、学校さえ出りゃブチャラティもおれのこと子分に
してくれるかと思って、必死で我慢したぜ。我慢してガッコ出て、街歩いてたフーゴ捕ま
えて、ブチャラティに内緒でポルポさんに繋いでもらって
……もらったライター速攻で消しちまって」
「フーゴに火を消されたか？」
低い声で、アバッキオが聞いてきた。
「え？」
「いや、……なんでもない」
火ばかり見つめて歩いていて、すっ転んで火を消してしまったのだ。
「そしたら、どっからかフーゴがすっ飛んで現れて、気をつけろ！ 悪魔が出るから！ っ
て注意してくれて、あいつは影の中を移動するとか教えてくれて、そんであのブラック・
サバス？ やっつけることができたんだ。そんでおれ、やっとブチャラティのチームに入
れたんだよ……」
「地味にお節介して回ってるんだな、あいつ……」
感心したようにアバッキオが呟いた。
「いいやつなんだよ、おれ、大好きなんだよ……」
鼻水を啜りながらナランチャが肯いた。
「じゃあなんでケンカしたんだ」
「それは……」
ナランチャは口ごもった。
冷える日だというのが解っていたのか、太陽が力を失って消えかけると、すぐさまアバッ
キオはソースパンを火に掛けて、タマネギを炒め始めた。ナランチャの涙が止まらなくな
るほど、大鍋に２杯分も切ったタマネギのスライスが、どんどん溶けてくたくたになって
いく。黙って、根気の要る仕事をアバッキオは口を引き結んだままに続けていく。
「ああいう仕事に向いてるんですよね」
ふと、その後ろ姿を見て呟くフーゴの目が、やっぱり和んでいるのをみとめて、ナラン
チャは堪らなくなった。
「フー」
終いまで言わせずに、フーゴは２階のオフィスに逃げた。
「いったいどうしたんだ二人とも！ ケンカの原因はなんだ？」
さすがに夕食の席でブチャラティが問いただした。
「ゆうべこの前頭葉機能の損傷したバカがぼくのことをおかしたんです」
夕食の食卓は凍り付いた。
「……アカデミックな罵倒語で意味が取れなかったんだが」
ブチャラティはとりあえず台詞の前半を吟味することにしたようだ。
「大脳の前の方……のことだよな？ たしか、やっていいことといけないことを判断して
行動を調節するんだったか？」
眉間に皺を寄せて、アバッキオが記憶をたぐった。
「さすがだな。国家警察の試験にパスする頭は違う」
ブチャラティは尊敬のまなざしだ。
「いや、そんな……」
ナランチャは頭を抱えたままバカップルのいちゃつきをやり過ごした。
「それで、そのやっていいことと悪いことの判断のつかない頭がなにをしたって？」
「おかしたんですよ、ぼくのこと……」
終いまで言わせずに、アバッキオが立ち上がると、ナランチャの襟元を掴んで吊り上げた。
「おまえッ！ そりゃ本当にやっちゃいかんことだろうがッ！ ソドミィ（同性愛）は神
様がお許しにならんッ！」
「ああ、そっちはともかく」
ブチャラティはフーゴを気遣ったが、
「ともかくじゃないッ！ いいか、神様はまずアダムを、アダムからイヴをお作りになった。
そうして、その、こほん、交わりをして子供を殖やすように仰せになったんだ。いくら
好きでも男同士、女同士がやっちゃいかん。これは神様が禁じられたことなんだッ！」
石頭による日曜学校の講義が始まってしまって、食卓の雰囲気はしらけきった。ブチャ
ラティは平然とオニオングラタンスープにスプーンを突っ込んだし、フーゴは、ああ、こ
ういう素朴なひといいなぁ、ぼくが子供を産むなら父親はこういうひとがいい、としみじ
み突っ立ったままのアバッキオを見上げていた。吊り上げられて窒息寸前のナランチャは、
異議を申し立てる余裕はなかった。
「とりあえず、相手が男だろうが女だろうが、相手の同意を得ないのはまずいな。いくら
わたしたちがギャングだからって」と、スープがちょっとまだ口をつけるには熱すぎるの
を見て、ブチャラティがナランチャをもぎ取るなり、スティッキィ・フィンガーズで壁を
切り開き、ナランチャを埋めて首だけ出してジッパーを閉じた。
「そんなに血が有り余っているなら、明日にでも献血に行くといい。聖アンナ病院なら寂
しい思いをしている尼さん看護師たちが、そういう元気な男の子を可愛がってくれるそう
だ」
「ああ、若い男が入院すると、大サーヴィスで、出てくるときには人相が変わってるそう
ですね」と、フーゴが肯いた。
「ブチャラティ、ごめんって、助けて！」
「謝る相手が違うんじゃないのか？」
ブチャラティは平然とスープをかき混ぜている。
「だって、おれ、フーゴが好きなんだよッ！」
「それが間違っているというんだッ！」
アバッキオがいきり立つ。
「アバッキオ、少し黙ってろ」と、ブチャラティは恋人の口をジッパーで留めつけた。
「間違ってますよッ！ ぼくにはその気はないんだからッ！」
「ナランチャ、その気はないそうだ」
そう言って静かにブチャラティはスープを飲み始めた。
「なんでだよ！ おれはずっとおまえが好きだったんだからな！ 出世して幹部になって、
おまえを嫁にもらって暮らすのが夢なんだ！」
（無理だろう！）
アバッキオが目で突っ込んだ。
「無謀だッ！ ぼくの夢はブチャラティを大幹部にして、それから足を洗ってうちへ帰っ
て兄貴を追い出してぼくがうちを再興することなんだからッ！」
「そんでいーよ。そんでおまえは自分ちの財産、組織に寄付して幹部になればいいじゃん。
やったー、おれ逆玉？」
「バッカヤロー！ 誰がおまえなんかと！ ブチャラティ、もうこいつ殺しちゃっていい
ですか？ チームの貴重なメンバーだと思ったから殺さなかったけど、もういいでしょ？
存在することが許せない！」
「ああ、もう少し待ってくれ……本当にいい出来だな。とろとろのタマネギが、心の底ま
で暖まりそうだ」
ブチャラティは平然と食事を続けている。
「おまえは自分の気持ちを伝えたつもりになって、一番乗りしていい気になって、それか
ら欲望を発散してスッキリしたかもしれないけどな、ぼくはとっても痛かったんだぞ！
ビックリして、悔しくて、惨めで。しかも、その憎い相手と次の日からまた日常生活送ん
なきゃならないぼくの立場のことなんにも考えてなかっただろう！ このド低脳！ クサ
レ脳味噌！ 三大欲求に手足が付いただけの原始人！ 一回やったら女は言うこと聞くと
でも思ッてんのか！ ……絶対許さないからな！ 昨日ホントに殺さなかったのは、ブチャ
ラティが悲しむからなんだからな！」
「ああ、昔言ったな、人を殺してまで守るほどのもんでもないって……悪かった」
ブチャラティは手を止めて、涙を堪えて唇を噛みしめているフーゴに目を止めて言った。
それは、スタンドが出てまだ少しの頃、ブチャラティを守るためにパープル・ヘイズを暴
れさせ、３人ものチンピラを溶かしてしまって自己嫌悪するフーゴに言ってくれた言葉だ。
「殺していい？」
「いや困る……医者に行かなくていいか？」
「たぶん、大丈夫……」
顔を青ざめさせて目を落したフーゴを見て、アバッキオが声を出せないままに立ち上が
ると、ナランチャの顔に拳を叩き込んだ。
「でも、おれ、殴ったりはしてないぜ……」
アバッキオはもう一度拳を振り上げたが、堪えると、マジックを持ってきてナランチャ
の顔に「サル」と書いた。
「良く堪えてくれた。ありがとう、アバッキオ」
スープの皿を空にして、ブチャラティが口をぬぐった。
「フーゴ、彼の顔は当分見たくないだろう、明日から、川向こうにちょっと勉強に行って
きてくれないか」
「なんでぼくがここを出されるんですか？ でていくならあのバカの方でしょう？」と、
フーゴが噛みついた。
「いや、グリマルディーニのおやじさんがなにやら重要な相談があるそうだ。長くかかり
そうな話になるようだから、おまえが行って、良く話を聞いてきてくれ。こういうのを任
せられるのはおまえしかいない」
「わかりましたよ……」
「ああ、忘れていた」と言って、ブチャラティはアバッキオの口のジッパーを開けてやっ
た。
「とても美味しかったよ。おまえも味わうといい。フーゴは、食べるどころの心境じゃな
いかな？ 心が温まるぞ？」
「……頂きます」
フーゴも黙ってスプーンを使い始めた。
ブチャラティは、アバッキオが皿を空にすると、合図して、自分たちはオフィスへと移
動した。
「フーゴ、ゴメンな。おれどうかしてた……でも、ホントにおれ、おまえに拾ってもらっ
たときから、おまえのこと好きだったんだよ。きれいで、頭良くて、クールなのに凶暴で、
辛辣なのに世話焼きで、優しいのにおっかねえ……ほんとおまえは天使みたいだよ」
黙ったまま、食事を終えたフーゴは皿を下げ、洗ってしまうと、ジッパーを開けて、ナラン
チャを出してやった。無言のままに顔を背けて、帰宅してしまったけれども。
それからフーゴは、この夏のグリマルディーニ老引退に向けての下準備のために、グリマ
ルディーニのオフィスに通い詰めた。３日に１度くらいは、夜に、報告のためにオフィス
寄ったりもしたが、ナランチャには会わなかったり、会っても、ほとんど無視していた。
その間、アバッキオが慣れない様子でナランチャの面倒を見てやっていた。
「なあ、もうすぐサン・ヴァレンティヌスの日だろう？」
二人でパトロールに出ながら、こっそりと囁いた。
「趣味のいいカードを置いてる店とか、判るか？」
「あんたも大変だね」
ナランチャは笑った。
「いや、女性はこういうのを抜かすと怒るらしいから」
「ブチャラティはそういうの……やった方がいいかな？」
あのあっさりして女性を感じさせないブチャラティが……と言いかけて、コロンを一生
懸命選んでいた様子を思い出してナランチャは途中から結論を変えた。
「……おまえも、なんかやっておくに越したこと、ないんじゃないのか？」
低い声の呟きに、顔を見上げると、もうアバッキオは素知らぬふりをして遠くを見つめ
ていた。
そして迎えた当日、ブチャラティはチョコレートの小箱ときれいなカードをもらって、
ご機嫌で二人でオフィスに籠もって何かしている。今日は来るかな、と思いつつ、ナラン
チャがアジトの１階で時間を潰していると、書類の束を抱えてフーゴが現れた。
「フーゴ！」
すぐさまナランチャは立ち上がって、近づく。フーゴは油断なく距離を取って、険のあ
る目つきで聞いてくる。
「なにさ？」
「あの、今日、聖ヴァレンティヌスの日だから」
「ああそうだね」
冷たい口調は、いっこうに改まらない。
「……これ」
フーゴの好きなチョコケーキを奮発して、ナランチャは差し出した。
「一応、もらうけど……」
手を出しておいて、フーゴは冷たく言い捨てた。
「こないだの迷惑分だからね。全然、これから態度変わるかもとか、思わないでよねッ」
さっさと２階へ上がっていったのを見送って、ナランチャは頭を抱えた。
「てごわッ！」
そして、サン・ジョルジュ・マジョーレ島の船着き場で。
「おまえら、ど……どうかしているぞッ！ 完全に孤立するんだぞッ！
どこに逃げる気なんだッ！？ い……いやッ！ このヴェネツィアから生きては出れな
いッ！」
さすがのフーゴも、冷や汗をかいて皆の判断を否定した。それには触れず、ジョルノが
静かに問いただす。
「ナランチャ……
君はどうするんです？」
ナランチャは迷っていた。それを、ブチャラティは容赦なく斬った。命令を求めるナラン
チャに、自分で判断することを求めた。その強い精神を、フーゴは目に焼き付けていた。
強いひとだ。優しいひとだ。公正で、信じられる、真実自分が命を預けるに足るリーダー
だと思って付いてきた。
だが、あたまは良くない。
そう結論づけたのだろうか、フーゴは微動だにせず、ブチャラティとの別れを決意した
ようだった。
船が出たとき、ナランチャはジッパーで繋がれたトリッシュの手首から、彼女が父に裏
切られ、殺されかけたことを悟った。
「オレも……昔……
見捨てられた……父さんからも……信じてた友達からも……見捨てられた」
トリッシュと自分との共通点を見いだしたナランチャは、一瞬にして、トリッシュの為
に命を懸けることを決意した。
振り向くと、自分を納得させるための理屈を口から矢継ぎ早に繰り出して、心の乱れを
落ち着かせようとしているフーゴに近寄る。
「フーゴ、大丈夫だ、おまえはきっと正しいよ。あいつらは地獄の苦しみの中にのたうち
回るだろう」
ただならぬ様子に、落ち着くつもりが逆に働いている心の自傷行為をやめて、フーゴが
ナランチャを見つめる。
「おれの天使。おまえは逃げて、生き延びろ。夢があるんだろう？
だけど、おれは行く。誤解すんなよ？ トリッシュに惚れたんじゃないぜ。惚れてんの
はおまえだけだ。でも、やつらについて行かなきゃと思うんだ」と、フーゴを抱き寄せて、
口づけた。
「おまえんちの、おまえの墓の横、空けとけよ？ おれが入るんだから。つまんねえぼん
ぼんと政略結婚なんか絶対すんな。おまえは一生おれのものなんだからな。ボスを倒して、
ギャングの大幹部になって、絶対迎えにいってやる」
「ナランチャ、きみは、度し難いバカだ」
呆れたように、フーゴが喘いだ。
「ああ。じゃ、な」
最後には笑って、ナランチャは海に飛び込んだ。クロールでボートを追いかけながら、
大きな声で呼びかける。
「ブチャラティィィィィィ
行くよッ！ おれも行くッ！ 行くんだよォーーーーーッ！！」
ボートはＵターンし、最後の１人の同行者を拾い上げた。それを涙で見送って、フーゴ
は階段を登って、桟橋に戻った。チームの参謀として、最後にできることをするために。
そして、彼女が生き延びるために。
ぼくにだって、夢があるんだ……。
たったひとりの、小さなサヴァイヴァルが始まる。
＜０６−０３−０９＞
蛇足。
某所で、「フーゴはじつは女の子で、ブチャラティだけは知ってた。ナランチャは最初
男だと思ってじゃれてたんだけどそのうち気がついて、フーゴが成長して体つきが女の子
らしくなってくると意識してそのうち大変なことになる」というのを拾ったので妄想。ぼ
くッ娘になった。
最後はナランチャ結構男らしく決めたが、原作を読み返したらまだヘタレだったのでガッ
カリした。
このフーゴは実家に帰ってちゃんとヘタレ兄貴を追い出して実権を握れたかは不明。
男装はヘタレ兄貴よりこの子に跡を継がそうと画策した後妻のママンの指示という裏設定
（「オルフェウスの窓」かっ！？）。大学を出たのも、男装がばれてセクハラされたので
身を守るための暴行、と妄想。じつは女と明かせないためにセクハラを言えなくて大学を
やめざるを得なかったと。
ちなみに、作中、アバッキオは最後まで気づいてない。ブチャラティは拾ったときから気
づいてたが、身を守るため知らんぷりで男装を続けさせてた。
じつに素朴なアバッキオに恋心を抱いているみたいだが……そこまではどうよ？