アウローラ
その朝（７３）
１
「フロラってのは花の女神ってことになってるがよ？ ホントの所ねーさんは何の女神だァ？」
と、ミスタが振った。
「まーオレにとっては幸運の女神だけどサ。イヤホント、ねーさんがあの留置所にやって
きたときから、ミスタさんの人生は大きく変わった訳よね。
もーあれでボン・キュッ・ボンのボディで料理上手だったらカンペキ、決闘してでもい
ただいちゃう所なんだけども」
マキーシのブチャラティの家には、ブチャラティの市長当選、ネアポリス復帰を祝って
旧ブチャラティ・チームの皆が揃っていた。
「ヘイズ出しますよ。
ブチャラティはそんなんじゃなくて、みんなの、ネアポリスの守護女神でしょ」と、フー
ゴが斬って捨てる。彼が一番の、昔からのブチャラティの信奉者。
「勝利の女神！」
ナランチャがきゃきゃっと笑った。
「アテーナー、ギリシャの女神ですけど」
ジョルノは呟く。
都市の守護者にして美しき智恵の女神、そうして野心を持つ若者に好意的だ。色事に興
味はない……筈なんだけど。
「……まあ、奴にとっては世界の中心、正義の女神で救いの大天使で偉大なる愛の女神様
なんだろうけどよ」と、厨房に立って彼らの胃袋を喜ばせ続けている男に眼をやってミス
タはにっかり笑った。
「正義の女神は外見に左右されないように目隠しをしているそうですが」
フーゴが苦笑する。
「面喰いなんだもんよ、ねーさんってば」
ミスタが笑い捨てた。
……暁の女神（アウローラ）よ。
ぼんやりとした顔のままそのさまを観察していたアバッキオの娘は、心の中で断言した。
２
それはほんの去年、彼女の知る限り最大の鬱が彼を襲ったときのことだ。
「塩っ気が全ッ然足らねえな。あぁ？ 色男。ここじゃあこんなお上品な料理は受けねえん
だよ」
がちゃんッと食器の鳴る音がして、荒れた声は２階の子供部屋にまで聞こえてきた。
「おいッ」
椅子の引かれる音がすぐ続き、抑えた声がして、諍いには発展しなかったようだった。
きっとアンジェラの大好きなきまじめで寡黙な父は、客に対して怒りを露わにしたりは
しなかったのだろう。
「バルトロ、そんなに飲んで、料理の味が解るかよ」
ほら、すぐに他の客から助けが入る。
「アバッキオ、悪いな……」
「いいやッ！ おれには解るって！ 女房に逃げられてネアポリスから流れてくるような
腰抜けの作るような料理、塩気が足りねえわけよ！ おめえらよくこんなもんありがたがっ
て喰うぜ、他にたまる場所がないってのか？」
たちのわるい酔い方をしている客のようだ。アバッキオの店は規模は小さいが、食事を
楽しんで貰う店だ。そぐわない。
「バルトロ、いい加減にしろ、怒るぜ？」
「アバッキオ、気にすんな、おれはあんたのめし好きだぜ、喰い飽きねえし」
「アバッキオ、怒って良いんだぜ？ こいつはちょっと飲み過ぎだ」
くちぐちに、客が父を庇うのが聞こえてきて、アンジェラはほっとした。そして、階下
の騒ぎは聞かなかったことにして自分は眠りについた……。
しかしその客の遠慮のないものいいは、繊細な父の心をひどく抉ったらしい。翌朝、い
つもの時間より早く階下に降りていったアンジェラは、父がリヴィングの肘掛け椅子に力
なく坐り込んでいるのを見いだした。
いつもの温かな食事の気配がしない。
香り高く焼けたパンの匂いも、かぐわしいコーヒーの香りもしない。
冷え冷えとした室内は、窓も開けていなかった。
「おとうさん？」
「あ、ああ、おはようアンジェラ、もうそんな時間か？」
もしかして、ベッドで休むこともしていないのかも知れなかった。洗顔もまだらしい。
端整な顔には、うっすらと、無精髭が生じていた。
父は繊細な質だ。アンジェラはこんなことには慣れている。
アンジェラはてきぱきと湯を沸かし、窓を開けて空気を入れ換え、いつもの店に焼きた
てのパンを買いに行った。
「しっかりしてよね」
父親の前に料理を並べ、自分も略式の朝食を採るとさっさと支度をして登校した。
田舎の学校なので、給食はなく、昼には一斉下校して昼食を自宅で採る。そろそろ仕込
みに入って、自宅兼店舗になっているアンジェラの家は、皆が遠回りしてうらやましそう
に匂いを嗅ぎにくるのがふつうだった。そうして、ただいまとドアを開けると、父はすぐ
さま手を止めて、アンジェラのために平行して作っていたたくさんの料理をすぐ並べてく
れるのだ。
今日は何の匂いもしていない。父が下ごしらえをする鍋の煮える音や、フライパンをあ
おる音もしてこない……。
「おとうさん、店、開けないの？」
帰宅するなり、まだ椅子に坐り込んでいる父にアンジェラは尋ねた。
「ああ……もうそんな時間か、ちょっと、今日はよすよ。具合が悪いんだ」
父の横に、薄青い影が出ていたのが消えた。父の顔にいっそう疲労が濃くなっているの
をアンジェラは見た。テーブルには、朝の食器が手つかずでまだ残っている。アンジェラ
は、溜め息をつくぐらいは権利のうち、と心得て、あとは黙って残り物をアレンジして二
人分の食事をなんとか拵えて食べた。午後の授業のために再度家を出て、もう一度溜め息
を吐く。きっと夜もだめだ。今夜は何を食べようか。
３
それからずっと窓も開けない日が続いた。家の中は薄暗く、空気もよどんで、そして、
父はずっと椅子に坐り込んで音楽を聴いている。
「ブラームスだよ。ドイツ・レクィエム……
聖書の文句をドイツ語で歌っているんだ。
『主よ、教えたまえ。我が身にいつか来たる終焉の日のことを。
我々皆、死を免れえぬことを……
嗚呼、人は無に等しきもの、斯くもひたぶるに生きたるに
影が如くにさまよい、儚きものがためにたち騒ぐ
蓄えて知らず、そを収めるものを
主よ、今や我、誰をか頼まん……』」
……暗いわね。
アンジェラは簡単に思った。もう彼女は、父が「生き霊使い」だということを知ってい
る。大好きな母の生き霊を呼んで、声を聞いたり、話しかけたりして心を慰めていること
も知っているし、その昔、彼が警察を辞めるに至った悲劇も、薄ぼんやりとした影として
見知っている。現に今、若い姿の母が、また同じ台詞を繰り返している。
……ジョルノを取ったんじゃない……
女房に逃げられたといわれたのがショックだったのだろうか。それとも、心がけてこの
漁師町の味付けを覚え込んだと思っていたのに、塩気が足りないといわれたのが堪えたの
だろうか。そう言えば、あれだけ毎日アンジェラの食には心を砕いてくれていたのに、こ
こ数日は自分が食欲がないからと言って、アンジェラの食事も用意してくれないのだった。
ノックの音がした。隣のカタリナだ。
「母さんが、これ持ってけって。おじさん、大丈夫？」
小鍋に入れた煮物を差し出してくれる。
「うん……ありがと」
「町の人も心配してるよ？ 市場の人も、一番いい魚除けて待ってるって」
「ありがと、伝えとくね」
前の年の秋にぎっくり腰で寝込んだ以外はほとんど病気らしい病気をしていなかった父
だが、時々鬱にはまりこむときがあるのは密かに知られている。そういうときは、皆、陰
ながら心配してくれているのをアンジェラも判るようになってきた。
……ほんとうに、しょうがないんだから。
だれもが見とれるハンサムだが、マジメで信心深くてうっとうしい。父に付き合わされ
て教会に通って、ついでに宗教曲が耳タコになってしまって、今時ミサの典礼文がそらで
言えるほどになってしまった自分をもう笑ってしまいたい。こんな隠し芸、受けるだろう
か。
ドイツ人の暗い宗教曲はまだ続いていたらしい。深海から泡が海面を目指すように同じ
言葉が続く。繰り返されるごとに言葉は大きくなって、ラッパが華々しく鳴り響く。
……イッヒ ホフェ アオフ ディッヒ。
「なんて言ってるの？」
「『我が望みは御身にあり』……神様の救いを待っているんだ」
全員で「あなたを」と叫んだあとは、曲想が変わってスピードの載ったフーガが始まっ
た。
「な？ いいだろ？ ここからがいいんだ……」
虚ろな目で父は呟く。
「おとうさん、みんな心配してるよ？」
視線を娘にくれない父を見下ろして、アンジェラは虚しいと思いつつ声を掛けた……。
返事はなかった。フーガが虚しい華麗さで薄暗い家の中の空間をぐるぐると埋めてゆく……。
アンジェラは思わず耳を覆った。
……おかあさん、助けて！ すぐに帰ってきて！
アンジェラは手元にあったメモ用紙に無意識に思いの丈を殴り書きすると、それを折り
たたんで「ないない」した。これも、彼女の隠し芸。人に知られてはいけない。……知ら
れるはずもないが。
父譲りの白い整った顔を、母のように無表情に保って。自分は溜め込む質だと、アンジェ
ラは既に認識していた。
４
「どうした？ 暗いな、締め切って。外は良い天気だぞ。
またなにかうっとおしいのを聴いてるのか？」
その時、待ちに待った救いの手が現れた。もう週末だったのか。今週は帰ってくると連
絡があっただろうか、また例によって思いつきで寄ってみたのだろうか。母が輝く笑顔で
ドアを開けて入ってきた！
「フロラ、……あんたか！？」
落ち込みきっていた父は、それでも緩慢な動作でしか反応しなかった。
「こりゃひどいな。アンジェラ、ちゃんと食べてるか？ 腹減ってないか？」
やつれた頬に両手で触れてみて、母はすぐにアンジェラを振り返って見てくれた。
「うん……」
「これでなにか食べておいで。この辺にもトラットリアぐらいはあるだろ」と、母はすぐ
さまどこからか分厚い財布を取り出して、無造作に紙幣を十枚ほども抜き取って握らせた。
「ええ……でも」
買い食いなどいつもの父なら許さない。けれど、これはすごい高額紙幣だ、おろしたて
の新札、何枚あるんだろう、これだけあったら欲しかった本が買える、あの文房具屋に飾っ
てあるきれいな手帳に、まだ早いといわれて我慢させられている万年筆、ええとそれから
良い匂いのする石鹸と……アンジェラは友人といつも言い合っている「臨時収入があった
ら買いたいものリスト」を思い出していた。
「いいから行っておいで。それで日が暮れるまでお友達と遊んでおいで。ええと、カタリ
ナ？」
「ええ！」
首はねじって娘の方を向きながら、母は父の頭を抱き取って胸にしっかりと押しつけて
いた。いつもならすぐさま子供の前でなんだ！ とか、まだ日が高い！ とか抵抗するの
に、今日の父はそんな気力もない。
……二人っきりにしてあげよう。
きっと大人同士のスペシャルなあれをするんだろうし。
女子小学生はませている。
それをすれば、大人は誰も幸せな気持ちになるらしいから。
そう理由づけて、アンジェラは軍資金を手に親友のうちのドアを叩いた。
５
「店を畳んだらいいじゃないか」
久し振りのまともな食事を３人して摂りながら、母はあっさり言ってのけた。アンジェ
ラがいない間に、母は重い口を開かせて、心の傷を癒やしつくしたらしい。夕方、ちょっ
と心配しながらドアを開けると、もう父は復活していて、家の中には温かな料理の匂いが
立ちこめていた。久し振りに市場へ出て、母と二人していろいろ買い込んできたらしい。
「べつにわたしはおまえを料理人にしたい訳じゃない。おまえが勝手に、ちゃんとしたも
のを食べないと身体に悪いとか言い出して厨房に立ちはじめたんで。金が要るんならもっ
と送る。この町に家を買ったのはわたしのワガママだが、ここじゃあ居づらいってんなら
また別の町に家を用意するから。
だいたい、おまえの料理はわたしが美味しいと思うんだから良いじゃないか」
とぼけた表情のままに言ってのける。ああ、なんて食卓の明るいこと。家中の灯りが点っ
て。せっかくのおまえの顔が見えないじゃないかなんてしれしれと言って、母は訪れると
いつも灯りを煌々と灯させるのだ。だから、アンジェラは母が好きだった。
「ばかやろう。
おれだって、べつに料理人として極めたい訳じゃあねえが、親がなんにもしねえでプラ
プラしてたらアンジェラの教育によくねえ」
父は大あわてで顔を洗って身繕いをしたらしく、やつれた顔はそれなりに整えられてい
た。背筋もしゃんと伸びている。襟元までキッチリボタンを留めているのはまあ性分もあ
るけど……おかあさん頑張ったな、とアンジェラはいけない想像を巡らせている。
お金に困らないからって専業主夫というのも外聞が悪いかも知れないが、味に文句を付
けられたからって３日も落ち込んでものも食べない姿を子供に見せる方がより教育に良く
ないだろう、とアンジェラは考えた。プロの料理人じゃないならなおさら。
「だからって、たった一人の客の口に合わないって言われたからって、それで落ち込んで
アンジェラに食事も作ってやれないなんて、そういうのを本末転倒と言うんだ。
アンジェラはどうだ？」
話を向けられて、アンジェラが自分の意見を言おうとしたとき、店のドアが激しく叩か
れた。
「今日も休みなのか？ おい！ アバッキオ！ いるんだろ？」
おおきなだみ声は、もしやあの時の客では……アンジェラは不審に思い、また、父がま
た傷つけられることを恐れた。
「ほっとけ」
母はこともなげにナイフとフォークを操り続けていた。アンジェラは一層母を尊敬した。
ほんとに、母の方がはっきり家族を守ることを心がけて実践している。
「ああ……いや」
父は露骨に心を乱していた。
店の外には、もう１人ふたりいるらしい、小声でたしなめる声やら、なんとかドアから
引きはがそうとする気配やらがしている。
それでも続けて叩かれるドアに、とうとう父は出て行った。
「ああ、済まねえ、今日も休みなんだ」
「なんだあ、遊びでやってるんならやめちまえ！」
まさしく父の心を傷つけたれいの客であった。アンジェラは目つきで母に合図した。
「いや……遊びじゃあないんだが。精進が足りなくて、お客には満足行って貰えなくて恥
ずかしいよ」
父は頭を下げて見せたようだった。クレイマーどもが怯んだ気配がした。
自分の落ち度はちゃんと認める勇気がある。マジメすぎる父が、結局のところアンジェ
ラは嫌いになれない。
「けッ……ほら、これを持ち込みだ、料理してくんな」
「いや今日は休みで。……女房が来てるんだ」
「アバッキオ、頼むぜ、こいつ事故で嫁さんに死なれて……自分じゃあコーヒーも淹れた
ことねえんだってよ。トラットリアで済ますにももうそこいらじゅうで嫁の味と違うって
ケチ付けまくって、出禁になって。
悪いやつじゃねえんだよ、頼む！」
両脇から常連客に頼み込まれて、父はしばらく立ちつくしていたが、背を向けた。
「入ってくれ」
それからは、ちゃんとコック・コートに着替えて店の厨房に入り、持ち込みの魚で１品
拵えて振る舞った。
「どうだ？ 心がけて塩を振ってみたが」
「足らねえな。うちの嫁の方がまだしもだ」
「バルトロ！ おまえ！
アバッキオ、こんでいいと思うぜ？ そりゃこないだはちょっと控えめかなって思わな
いでもなかったけどな」
「すまねえな？ 奥さん来てるんだろ？」
「いや、あんたたちには迷惑掛けちまったから。
バルトロさん？ 奥さんが亡くなったんならそりゃ不自由だったろ。うちの店で良けれ
ばまたいつでも来てくれ。もし、その気があるんなら、簡単な料理ぐらい教えるが」
「けッ、男が料理なんざ、できるけえッ」
わがままな男は酒に上気した顔を背けて吐き捨てた。
「だが、あんたの好みの、あんたの奥さんと同じ味の料理は、もうあんたしか知らないん
だろうが」
父の言葉に、バルトロはしばらく黙った。
「……ふん」
「おれだって、まともな調理師学校に行ったわけじゃねえんだ。試験は受けて資格は取っ
たがな。町の奥さん連中に少しずつ教わって。だから、系統だったまともな料理じゃなく
てすまねえな」
「そんなことねえよ、アバッキオ、おまえの料理はお上品ぶってねえ、食べ飽きねえ料理
だ。だからこいつを連れてきたのに、ワガママ言わせちまって悪かったな、おまえの料理
人のプライドを傷つけてしまってほんと悪かったよ、おれ達もたまる場所がなくて参って
るんだ、また店開けてくれよ」と、すかさず横の常連客が言葉を掛けた。
「そうだよ、この街の衆は、みんなあんたの料理が好きなんだ」
「よしてくれよ……」
父の気分がやっと上向いたことが解って、アンジェラはホッとした。
「ほんとに料理人になっちまって……」
母はまだぶつくさ言っていたが。
６
そういうことがあったから、アンジェラは母を父にとっての暁の女神だと思っている。
たった一人、凍える寒さと身に沁みる悲しさの中に沈み込んでいる時間を、颯爽と終わ
らせてくれる希望とインスピレーションの女神だ。父もそれが解っていて、母のことを唯
一無二の存在だと思っているのだろう。
「ばら色の指をもって夜を切り裂く乙女」
暁の女神を表現するこの定型句を教えてくれたのはフーゴだっただろうか。まさしく！
とフーゴは笑ってアンジェラの考えに同意してくれるだろう。たしかに、母はなにかを
切り開くしぐさを時々する。そうして、切れるはずのないものが切り開かれて、なにかが
現れ出るという経験を、アンジェラはしてきている。母も、なにかの能力者なのだろう。
「諸君！ 遅れて済まない。楽しくやっているか？」
ほら、ドアが開いて、彼らの女神が現れた。一同は心からの笑顔をもって出迎える。フ
ロラ・ブローノ・ブチャラティ、アンジェラの自慢の母を。
２４−１１−１１
蛇足。
子供のお友達のおかあさんと話していたら。
そこんちのおじいちゃま、おばあちゃまが具合が悪くなったので、お嫁さんたるそのお
かあさんがいろいろ料理を届けたり、替わって家事をしたりしたところが、気に入らない、
味付けが好みじゃないからって、
「ばあさんのと味が違う、うちの嫁は料理がヘタだ」、床の間に活けたお花も、おばあちゃ
まとは流派が違ってたようで、
「なんだこれは！？ へったくそ！」って、文句タラタラ。
じゃあそのかけがえのない奥様にはちゃんと毎日美味しいよって言ってあげてたのかし
ら。失礼なクソジジイよね。日本男児としては多数派かも知れないけど。
というわけで、失礼なクソジジイにアバッキオの心を抉って貰いました。ごめん。
イタリアーノは恋人にラヴレターを書くことでイタリア語を学ぶそうです。って、女の
子はどうするのよ？ ねえ？ どうして誰も突っ込まないの！？
……というわけで、あなたは女神だ、どんな女神、ええと、これこれこういうところが
この女神……的な頭の体操はいつもやってるんじゃないかな、と思って書きました。イヤ
単純に、アバッキオにとってブチャラティは闇から引っ張り出してくれる女神ってただそ
れだけ。「ばら色の指持つ」は、ローマ女神のアウロラじゃなく、ギリシャのエーオース
に対する表現だそうです、惜しい！ でも、ブチャの特徴的な身体部位は指でしょう。ア
ウロラ（極光のアレの語源でもある）は知性の光、創造性の光の象徴だそうで、そこんと
こもやっぱりブチャかな？ と。
「シラノ」じゃないけど、ただ「好き」だけじゃだめよ。相手のプライドをくすぐりつつ、
深く相手を理解していることを伝えなくては。あと、○○と××は似ている、という共通
点探しも、そのひとの考える○○、××それぞれの概念が出るので、結構深いんだそうで
す。やっぱりさ、頭使って生きよう。大切な人に想いを伝えるために。
あ、ブラームスの「ドイツ・レクィエム」はいい曲ですよ。最初あんまり暗くて、合宿
先で練習を始めた頃は夜逃げしようかと思いましたけどね。作中のところとか（第３曲）
抑圧からの解放がたまらん。